経済

地域との共創~日本公庫の取り組み(1)

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県事業承継・引継ぎ支援センターでの相談風景

 創業から新規事業の展開、次世代へのバトンタッチまで、企業経営にはさまざまな課題が付いて回る。関係機関と連携しながら、事業者の課題解決をサポートする日本政策金融公庫奈良支店の取り組みを7回にわたって紹介する。

 

共同で次世代へつなぐ

 

 日本政策金融公庫奈良支店は2023年8月、奈良県大和郡山市、同市商工会、奈良信用金庫とともに「大和郡山市事業承継地域ネットワーク」を構築した。事業承継が喫緊の課題となる中、地域の関係機関が協働して事業所を次世代につないでいこうとする新たな取り組みだ。

 

 取り組みの柱は、事業承継の啓発を目的とするセミナーの共催と、後継者不在の事業者の悩みに応える身近な相談の場の提供。いずれも、事業承継の専門家である県事業承継・引継ぎ支援センターと連携して実施している。昨年10月に大和郡山市内で開催したセミナーは37人が受講し、同市市役所で月1回開催している定例相談会には今年5月までに延べ11社が参加した。

 

 同様の地域ネットワークは、桜井市、大和高田市でも構築され、同支店も参画している。

 

 また、全国の日本公庫では、独自の事業承継マッチング支援を展開している。後継者不在の事業者と、事業を拡大したい事業者や創業者をつなぐ無料のサービスで、昨年までに全国で計1349件のマッチングを行い、うち168件が成約に至った。

 

 同支店を含め日本公庫は「事業承継の地域ネットワークの取り組みを地道に重ねながら、将来的には事業承継マッチングによる県内外の引き合わせにもつなげていく」考えだ。 

 

 日本酒「百楽門」で知られる1887年創業の酒蔵「葛城酒造」(御所市)は22年、第三者への事業承継を実現した。後継者不在に悩んでいた前の経営者と、30年間勤務した証券保険会社を退職して酒造りの道を模索していた現在の経営者が、県事業承継・引継ぎ支援センターによるマッチングを通じて出会い、事業譲渡が成立。同支店は資金面で支援した。こうして、伝統の蔵やブランドを守ることができた。

 

 同支店は「県内の関係機関と協働し、こうした事例を積み上げていくことで、県内の円滑な事業承継の実現に貢献していく」と力を込める。

 

=つづく=

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