歴史文化

官大寺から庶民信仰の霊場寺院へ - 元興寺・大和古社寺巡礼018

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元興寺(法興寺)

※社寺名は、基本的に現在使われている名称によりました。

※( )内は、神社は『延喜式』神名帳による表記、寺院は史料にみえる表記です。

※記事中の写真の無断転載を禁止します。

 

 我が国で最初に創建された本格的寺院・法興寺(飛鳥寺)を前身とし、平城遷都にともなって官大寺として新京に移され南都の学問寺として一画を占め、中世以降は奈良町の庶民信仰の霊場寺院として親しまれてきた古寺。「古都奈良の文化財」の構成資産として世界文化遺産にも登録されています。

智光曼荼羅と智光・頼光両法師を祀る極楽堂(極楽坊本堂)

 

エリア/奈良市

ご本尊/智光曼荼羅(奈良時代成立)

ご利益/諸願成就(曼荼羅〈まんだら〉とは仏菩薩〈ぼさつ〉の集まるところで、人々の願いがかなうところ)

宗 派/真言律宗

 

ご由緒 

 蘇我馬子・聖徳太子の発願により推古天皇4(596)年に創建された日本で最初の本格的寺院・法興寺(飛鳥寺)が、平城遷都にともない養老2(718)年に新京に移されて元興寺となりました。寺名の「元興」には、仏法興隆を意味した法興寺の名称を引き継ぎ、仏法興隆の起源という意味が込められています。創建当時の元興寺は、現在、ならまちとして親しまれているエリアの大半を占める大伽藍(がらん)を有し、金堂の本尊は弥勒仏でした。

 

 奈良時代には法興寺(飛鳥寺)の流れをくんで三論宗や法相宗の教学を中心としてきました。奈良時代の末に三論の学僧であった智光が観想浄土系の浄土思想を具現化します。智光が感得した極楽浄土変相図(智光曼荼羅)がよく知られるようになり、鎌倉時代以降は浄土信仰や地蔵信仰など、庶民信仰の寺院として親しまれるようになりました。

 

 元興寺は時代の流れの中で三つの独立した寺院(僧房と講堂跡の一部を伝える真言律宗元興寺、大塔跡の華厳宗元興寺、小塔院跡の真言律宗小塔院)となりましたが、今回は世界遺産に登録されている真言律宗元興寺を取り上げます。

 

 「元興寺古圖」(江戸時代後期)は元興寺の伽藍復元想像図ですが、実際は東金堂と西金堂はなく、また僧坊は三面僧房ではなく講堂の北に東室二組、西室二組がありました。江戸時代(安政6〈1859〉)まで存在した五重大塔の姿も描かれています。

「元興寺古圖」(江戸後期/奈良県立図書情報館蔵)

出典:奈良県立図書情報館まほろばデジタルライブラリー

ご本尊

智光曼荼羅

 智光が感得した浄土変相図(智光曼荼羅)は、阿弥陀如来の浄土である極楽浄土を描いています。小型で省略的表現ながら物語性を持つ特徴があります。

 

境内参拝・気が付かなければ…

※📸は撮影ポイント 

※スマホを見ながら散策できるモデル順路

 

東門(重要文化財) 

 拝観受付の右手の門。応永年間(1394~1428年)に、極楽坊の正門として東大寺の西南院から移築されました。

元興寺東門

極楽堂(本堂/国宝)📸

 官大寺・元興寺の僧坊が改築されて、寄せ棟造りの極楽堂と切り妻造りの禅室になりました。

 

 極楽堂は、奈良時代の学僧・智光が住んでいたとされる僧坊(東室南階大房)の3室分を拡大したもので、智光が感得した極楽浄土変相図を祀(まつ)り、11世紀末以降には浄土信仰によって極楽坊と呼ばれ貴族の参詣対象となりました。寛元2(1244)年に改築されて、独立した堂となっています。かつて学問僧の寄宿舎で観想道場でもありましたが、庶民の往生極楽院として信仰の聖地となった特異な存在です。

寄せ棟造で妻を正面とする極楽堂

 極楽堂の本尊は智光曼荼羅。宝前に静座して仏の世界・浄土を観想して自分の心を見つめましょう。仏・法・僧(三宝)に帰依しましょう。

 

講堂跡出土の礎石

 境内西側の講堂跡から出土した礎石です。上面の柱座からは、おおよそ直径3尺の太い柱が使われていたことが分かり、往時の講堂の大きさが偲(しの)ばれます。

 

 講堂には薬師如来坐像が祀られていたと伝えられています。

元興寺講堂の礎石

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