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質問「過去に嫌がらせで苦労しました。その相手から余命数カ月で会いたいと言われています」 - 我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる(2024年7月3日)

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【質問】

 教員として働いています。私は小学6年から高校3年までの7年間、近所の個人塾に通っていました。塾長には本当にお世話になりました。私が教員になる前に、塾長から「うちの塾で働かないか?」と誘っていただいたのですが、私は夜型の生活が苦手なので丁重にお断りしました。私が教員になってすぐ、私の勤務校に匿名で私を中傷する怪文書が届いて、私はずいぶん苦労しました。何年も後に、その怪文書を送ったのがあの塾長だと分かって、私はショックを受けて憤りました。そして最近になって、塾長から私に手紙が届きました。塾長は末期のすい臓がんにかかっていて、余命数カ月だそうです。塾長は手紙の中で、私に会いたいと書いていました。どうすれば良いか、非常に迷っています。ご助言をお願いします。

(40代男性)

 

回答 五條 永教(金峯山寺 執行長)

 

我知なヒント=ただただ聞いてあげればそれでよいのです】

 

 教員になられてすぐということですから、おそらくは、質問者さまの年齢が20代前半の頃になるのでしょうか。その時の質問者さまの心情を察しますと、とても心が痛みます。

 

 怪文書とは、いったいどのような内容であったのでしょうか。また、送り主が塾長であることが、果たしてどのような経緯で分かったのでしょうか。その他詳細についても、今回のご質問からは分かりかねますので、あくまでも推測でしかお答えができません。その結果、事実と相反してしまう可能性があるということだけは、あらかじめご了承いただきたいと思います。

 

 それでは、頂いたご質問の内容のみを頼りに、質問者さまとの対話を進めていきたいと思います。

 

 あの時からおよそ20年、質問者さまの年齢は40代。今頃になって、あの塾長から手紙が届き、もう思い出したくもない、あの忌まわしい怪文書の一件がよみがえってきたのではないでしょうか。さぞかし心苦しい日々をお過ごしのことでありましょう。塾長は末期のがんを患っておられ、余命は数カ月とのこと。さらには、質問者さまに会いたいと書かれているのです。質問者さまは、どうすれば良いか、非常に迷っていますとのことですが、この状況であれば、迷って当然だと思いますし、とても複雑な心境にならざるを得ませんよね。

 

 会わないというのも、一つの選択です。しかしながら、質問者さまが、このようにして、本紙に質問をされたという事実から推し量りますと、質問者さまの心の中では、もうすでに答えは決まっていて、会った方が良いと思っていらっしゃるのではないのでしょうか。いかがですか。

 

 会ってみたら良いと思います。どのような結果になっても、もういいじゃないですか。そのような覚悟であれば、会われたら良いと思います。きっと塾長も後悔の念に堪えないのでしょう。

 

 ただし、ここで気を付けておかなければならないことは、塾長が何を言ったとしても、ただただ聞いてあげるということです。ただただ聞いてあげるのですよ。ほほ笑みを絶やさずに、ただただ聞いて、うなずいて、そのようなことができますか。ここで、あえて質問者さまに問わせていただきますが、本当にそのようなことができますか。もし、できないと思うのであれば、会わない方が良いかもしれません。

 

 怪文書のことは、これまでの塾長の人生においては、いつも足かせとなって、塾長を苦しめてきたことでしょう。まさに自業自得です。しかしながら、このまま塾長を悪者のままにしておいても、誰も得をしません。早く、足かせを外してあげたいものです。もうお分かりだと思いますが、足かせを外せるのは、質問者さまだけなのです。

 

 質問者さま、20年間、本当によく頑張りましたね。もうひと踏ん張りです。さあ、勇気を出して!

 

【我知(がち)ーお坊さんに聞いてみる】

奈良の僧侶が悩み相談や質問に答えるコーナー。お坊さんに相談したい、 仕事や人間関係、恋の悩み、人生相談や信仰・仏教の教え、お寺への質問などが対象です。お坊さんへの質問を募集しています。採用は弊社と回答者で判断し、掲載の有無や掲載日についてお答えすることはできませんのでご了承ください。

 

【回答者】

興福寺 辻 明俊さん

金峯山寺 五條 永教さん

秋篠寺 堀内 瑞宏さん

宝山寺 東條哲圓さん

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