奈良・猿沢池の水質実験「効果あり」 透視度3倍、汚れも改善
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奈良県奈良公園室は20日、夏場を中心に濁りが発生していた奈良市登大路町の猿沢池に、近くの奈良国立博物館から引いた地下水を2カ月間流して水質改善を図った実証実験で、水の透視度や水の汚れを示す指標「COD」(化学的酸素要求量)の数値に改善がみられたと発表した。同室は「季節による変動はあるが一定の効果が確認できた」として、来年度から同様の水質改善策を本格的に導入する方針だ。
猿沢池は興福寺五重塔が水面に映る風景で知られる人気の観光スポット。しかし、水の流入量が少なく、滞留時間が長いことなどから夏場を中心に濁りが発生していた。
実証実験は9月30日から11月29日までの2カ月間、実施。奈良国立博物館の井戸水を約1キロ西にある猿沢池に毎秒最大3リットル流し、2週間で約4000立方メートルの池の水が入れ替わるようにした。自然流下だと猿沢池に流れないため、途中でポンプでくみ上げ、仮設導水管で別の水路につないだ。
水質データは8日おきに池の4カ所で計測。水面からどこまで見通せるかを示す「透視度」は4カ所平均で、実験前は35センチだったのが、2カ月後は91センチに改善。池の縁周辺は底が見える状態になったと言う。
水の汚れ(有機物量)を示すCODは、実験前は1リットルあたり18.5ミリグラムだったのが2カ月後は7・8ミリグラムとなり、国の環境基準(湖沼)8.0ミリグラムを下回った。 一方、プランクトンの異常繁殖につながる全窒素と全リンは実験前と後で、全窒素が1リットルあたり1.1ミリグラムが0.5ミリグラム(環境基準1.0ミリグラム)、全リンは0.06ミリグラムが0.04ミリグラム(環境基準0.1ミリグラム)とわずかながら改善した。
水温が下がるとプランクトンの増殖が抑えられ、水質は改善するものの、水温が20度以上あった10月でもCODの数値などが低下していたことから、県は一定の効果があったと判断。今後は恒久的な導水路を整備し、来年度から導水を実施する。
県奈良公園室の篠田隆三室長は「猿沢池を訪れた方に奈良公園特有の風致景観を楽しんでもらえれば」と話していた。