歴史文化

奈良の崇道天皇社、防災設備整備へきょうからCF募集

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火災に見舞われた重要文化財の本殿と藤井宮司=18日、奈良市西紀寺町の崇道天皇社

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昨年の火災被害教訓に

 

 昨年7月に近隣の火災で本殿(国重要文化財)が被害を受けた奈良市西紀寺町の崇道天皇社では、大切な文化財を守るため防災設備の整備を決めた。そのための費用を募るクラウドファンディング(CF)をきょう20日から実施する。

 

 

現存最古の春日移し 

 

 同社は806(大同元)年に平城天皇の勅命により、桓武天皇の弟、早良親王の鎮魂のために創建。火災の被害を受けた本殿は、1623(元和9)年に春日大社の摂社、若宮神社の本殿を移建したもので、現存する「春日移し」の建物では最古とされる。今年、20年に1度の「式年造替」で修復が進む現存の若宮社本殿よりも約240年古い、桃山時代の建物と推定されている。

 

 

150メートル離れた工場から延焼

 

 火災当日、同社から150メートル東に離れた菓子工場から出火。藤井秀紀宮司(47)は非常に燃えやすい檜皮葺(ひわだ)ぶきの本殿屋根を湿らすため、水道から水やり用のホースで10分間放水したが、境内は煙に包まれ、火の粉が飛んでくる状況だったという。

 

 30分後、火の粉が本殿正面庇(ひさし)に落ちて発火し、火柱が上がった。藤井宮司は脚立に登って放水し初期消火を実施したため、火はそれ以上広がらず、黒い焦げ跡が残る程度で大規模な損傷にならずに済んだ。消防隊が到着したのは本殿が発火してから50分後だったという。 

 

 藤井宮司は「これだけの損傷で済んだのはたまたま自分が居合わせて対応できたから。檜皮ぶきの屋根に火がついたらたちまち燃え広がってしまうため、ご本殿を守るために必死だった」と振り返る。

 

 

目標は1000万円

 

 同社は常駐が宮司一人なので、文化財を守るための防災設備の必要性を痛感したという。整備には国からの補助金を受けられるものの、放水のために地下に貯水槽を作るなど大規模な工事が必要なため、広く支援を募ることを決めた。

 

 CFサイト「レディーフォー」で20日午前10時から募集を開始。目標額は1000万円で募集期間は11月30日午後11時まで。同社の特別朱印、朱印帳、焼け逃れた檜皮を納めた菊御守、御祈祷など支援金額による返礼品も用意している。防災設備の整備工事は今月5日に開始し、23年3月に完成予定。藤井宮司は「補助金だけでは賄いきれない。費用の負担が必要となるため、皆さまにご支援をお願いしたい」と呼びかけている。

 

 問い合わせは、同社、電話0742(23)3416。

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