近鉄奈良駅の北側、「きたまち」エリアの観光旅館「奈良白鹿荘」(奈良市花芝町)は昨年春から旅館内にカフェを併設。ご当地グルメのかき氷のほかランチメニューにも工夫をこらし、修学旅行や観光の宿泊客だけでなく、地元住民らも取り込んで、きたまちエリアの賑わい創出に一役買っている。

 

和を感じるかき氷をテラス席で

　旅館のロビー部分を改装した「HAKUSHICAFE cafe de hitoiki」(ハクシカフェ カフェ・デ・ヒトイキ)は、明るく和モダンな内装でテラス席もあり、開放感あふれる作り。開店当初より和風のデザートに力を入れており、かき氷も升(ます)の器で提供する。ご当地グルメとして定着してきた「奈良のかき氷」の中でも、同店のかき氷はひと目で和を感じられると海外からの観光客にも好評。

 

　升盛り氷(珈琲・750円)のシロップには、奈良の老舗コーヒー店「フジエダ珈琲」が同店用にブレンドしたコーヒーを使用。昔ながらのザクザクとしたかき氷の中にはバニラアイスが隠れており、食べ進めると味の変化を楽しめる。

 

明るいテラス席はペット連れにも人気。写真は夏季限定の升盛り氷(宇治金時・800円)=奈良市花芝町のHAKUSHICAFE

 

近鉄奈良駅前の東向北商店街を進み花芝通りへ。テラスを通りすぎると白鹿荘とカフェへの入り口が見える(右側)＝同

 

升盛り氷の看板にひかれ、足をとめる観光客も多い＝同

 

入り口左手側がカフェ。右側は旅館フロント。館内には鹿の作品も＝同

 

セットで800円とリーズナブルな洋のランチも

　昨年末からは、たまごサンドやフレンチトーストなどの軽食、週替わりのランチセットの提供を開始。専門店仕込みの大人な味が口コミで広がり、地元住民や近隣で働く人のお腹を満たすランチスポットとして注目されつつある。

 

　食事を充実させるにあたり、白鹿荘の厨房とカフェが連携し食材調達や試作を行い、フードロスの削減を意識したメニュー作りにも努める。調理を担当する松田哲(さとし)さんは、様々なジャンルの飲食店で経験を重ねてきた調理のプロ。ランチのメインとなるオムライスやパスタは、専門店で腕を磨いてきた一品だ。

 

　知人らとグループで予約来店した会社員の女性は、「いつも本格的で大人の味のランチがリーズナブルに頂ける。お店の方の人柄も気さくであたたか。本当は秘密にしたいけれどみんなに知ってほしい穴場のカフェ」と笑顔をみせた。

 

ミニサラダとコーヒーゼリーがついたランチセット(800円)。メインは週ごとにパスタとオムライスのどちらかを提供。この日はエビのトマトクリームパスタ=同

 

カフェの店名は宿と同じく「白鹿」が由来。ロゴの鹿はツノの有無に特徴が。世界中の人が訪れる奈良で、「あらゆるジェンダーや個性の人も尊重されるように」という思いを表現している＝同

 

　にぎやかな近鉄奈良駅の南側に対し、奈良女子大学や「きたまち」と呼ばれるエリアへと続く落ち着いた商店街にある同店。松田さんは「旅館の中だがカジュアルなカフェ。宿泊者以外も利用できることをもっと周知したい。ランチやデザートを気軽に楽しんでほしい」。店長でオーナーの寺尾純奈さんは「生活やお出かけの一部にしてくださる地元の方も増えてきた。商店街の一員として地域を大事にしていきたいので、価格も抑えて頑張っている。おいしいものでほっとした時間を過ごしてもらえたら」と話している。

 

ほかにもこんなメニューが

　食事やデザートも1000円以下と、近隣の人が日常づかいしやすい良心的な価格設定にこだわっている。無料で使えるWi-Fiも完備している。

 

抹茶アフォガード(900円)は、バニラアイスや白玉などに抹茶ソースをかけて仕上げる人気メニュー＝

HAKUSHICAFE提供

 

ランチセット一例。この週のメインはデミグラスソースのオムライス＝同

 

フレンチトースト(600円)などの軽食メニューは、ランチが落ち着く午後2時から注文可能＝同

 

ハンドドリップで入れるブレンドコーヒー(420円)は1杯の価格でおかわり自由。愛飲する常連客も多い＝同