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金曜時評


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問われる企業努力 - 編集委員 増山 和樹

2017年3月17日 奈良新聞

 「定時は午後5時だが、仕事が終わるのは午前0時近く。経営者の同族会社で風通しも悪かった」。関西圏のホテルに勤めていた男性からそんな話を聞いた。最近、別の業界に転職したという。

 労働時間の上限をめぐって平行線をたどっていた連合と経団連の協議は、繁忙期の上限を「月100時間未満」、2~6カ月では「平均80時間」とすることで決着した。政府は今後、両者の合意に沿って法改正の手続きを進める。労使の協定次第で事実上の青天井だった時間外労働は、規制の時代を迎えることになる。

 二つの上限数字は「過労死ライン」と呼ばれる危険ゾーンを基準にしたものだ。すでに警告灯が点滅している段階で、ここまでなら働かせてよいというお墨付きではない。残業は「月45時間、年360時間」が原則として合意された上限であり、これを上回る労働が特例であることを雇用者側は常に意識する必要がある。

 月45時間は1日にすると2時間ほどの残業で、当てはめるのが難しい企業も現実的には多いだろう。人手不足に悩む中小企業には厳しい数字だ。だが、今回の合意は企業に働き方改革を迫っている。定められた条件の下で何を生み出し、どのように収益を上げるのか、働きがいとは何なのか、労使が原点に立ち返って考えるべきだ。

 労働基準法第1条は「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」と規定する。理念にすぎないと片付けるのではなく、あらためてこの条文に向き合う時が今ではないか。

 合意に至るまでの協議では、基準に据えた100時間を巡り、連合側が「未満」、経団連側が「以下」とすることにこだわった。「未満」の決着は両者が首相裁定をのんだ形だが、単月とはいえ、99時間は決して少ない数字ではない。連日夜遅くまで働き、帰宅は深夜か未明という生活が続くことになる。上限の超過はもちろん、雇用者側が法的に問題はないと開き直るようなら、国は厳しく対応すべきだろう。

 繁忙期の残業も、職場の雰囲気や仕事のやりがいで精神的な負担は軽くなる。過労死は上司による執拗(しつよう)で無神経な指導が引き金となるケースも多い。常識外れの残業を当たり前にしないこと、パワーハラスメントを許さないこと、労使が真剣に協議すること―。この三つが今回の合意を進化させる道だろう。

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