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金曜時評


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先人の歩みに続け - 編集委員 増山 和樹

2017年1月27日 奈良新聞

 平城宮跡(特別史跡)を横切る近鉄奈良線について、県が宮跡外への移設を目指す動きを本格化させる。埋蔵文化財への影響など、移設に伴う課題を整理し、3月末までにまとめるという。大極殿と朱雀門を車窓に望む現在の路線も魅力だが、古代の宮殿空間を体感するのに移設が望ましいことは言うまでもない。あるべき姿に向けて努力を続けることは重要だ。

 平城宮跡は約130ヘクタールで、平成20年度から国土交通省が国営公園として整備している。基本計画によると、朱雀門前に交通ターミナルや観光案内所、出土遺物の展示施設が設けられ、訪れた人々はこのエリアで歴史的な理解を深めて朱雀門をくぐる。大極殿に向けて南から北への動線が想定され、奈良線をどのように横断するかは避けて通れない課題だ。

 国交省の基本計画では、大極殿北側の県道を含め、宮跡内の道路や鉄道が移設された場合の平面図を示す一方、「移転・移設が長期化することも考えられる」として、段階的な整備を方針に掲げた。

 県が奈良線の移設先として想定する大宮通りは大阪方面から車で奈良市の中心部に至る大動脈であり、並行して高架を建設するのは容易ではない。橋脚のために車線を減らす必要も出てくるだろう。トンネルはさらにハードルが高く、京奈和自動車道(大和北道路)に計画されているトンネルとの地中立体交差は避けられない。地下の大工事が水脈を絶ち切れば、平城宮跡に眠る木簡への影響も懸念される。

 平城宮跡は幕末~大正の奈良で植木職人だった棚田嘉十郎の身命を賭した活動によって保存事業が始まり、現在に受け継がれた。平城京の東一坊大路とほぼ重なる国道24号は、平城宮跡の手前で大きく東に折れている。計画では直進するはずだったが、事前の発掘調査で平城宮跡が東に張り出すと分かり、保存運動が巻き起こった。

 棚田嘉十郎がこの世を去って間もなく100年。平城宮跡は今や世界遺産である。その中を電車が走ることに対し、荒井正吾知事は会見で、「議論が大きくなったときに解決策を考えていないのは怠慢」と述べた。保存運動の歴史を振り返れば、道は遠く険しくても、近鉄奈良線は移設に向けた努力を続けるべきだ。実現性の議論はこれからだが、荒井知事の姿勢を評価したい。朱雀門から大極殿へ、さえぎるものなく歩ける平城宮跡は、先人たちの努力に報いる姿だろう。

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