ようやく秋が実感できる気候になった。夜長に気持ちよく読書を楽しむには格好の季節だ。

　そんな折に訃報が二つ。「ミスターラグビー」と称された神戸製鋼ゼネラルマネジャーの平尾誠二さんと、女性初の世界最高峰エベレスト登頂を果たした登山家の田部井淳子さん。

　個人的な話だが、神戸製鋼の日本選手権初優勝から7連覇までの時期、最もラグビーを生観戦した。常に新展開を見せ続けた神戸製鋼のゲームは魅力的で、公式戦以外の試合も追いかけた。その中心には平尾さんがいた。

　田部井さんには、媒体の情報を通して山歩きの楽しさを教えられた。山のだいご味は先鋭的な登山だけではないことを。県内など関西を中心に低山を巡った日々が懐かしい。

　2人の共通点は、自分の行為にきちんとした理論、哲学が存在したことだ。だからこそ両者の言葉、行動には人を動かす力があった。

　今年は各界で革新的な事跡を残した人が数多く他界した。2人を含め彼らは数々の興味深い著作を残している。今秋はそんな本に触れ、故人をしのぶのはどうか。いささか寂しくはあるけれど。(智)