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国原譜

奈良国立博物館で今年も恒例の正倉院展が…

 奈良国立博物館で今年も恒例の正倉院展が開幕する。注目の文物は黒漆に銀の模様が映えるペルシャ風水差し。端正な姿で気品を感じる逸品だ。

 いつ、どこで作られたのかは知らないが、遠く西域から伝わった文化の香りと、遥か古代から伝えられてきた歴史の重みが見る者の目と胸に迫る。

 正倉院の宝物は地中から掘り出された文化財とは違い、意図して保存され時代を超えて伝承されてきた。また当時の国際交流を反映して地域的な広がりを持つのも大きな特徴、そして魅力だ。

 戦後の荒廃から立ち直ろうする時期、初めて開かれた正倉院展で今回の水差しと似た名を持つ水入れ容器を見て、井上靖は詩と小説をものにした。

 その漆胡樽(しっこそん)と題された詩には、長い距離と時間を旅してきたであろう正倉院宝物は、見詰める人々の心に安らぎを与える―とある。同展に行くたび、繰り返し思い出す一節だ。

 今年も新しい出会いや発見があるだろうか。地域と時代を超えて伝えられてきた文物が、さらに現代人に何か大切なものを伝えてくれるに違いない。会期は11月7日まで。(松)

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