「あなただけはいつでも変わらずにいてくれたの」。そんな流行歌もあったが、17日に最終回となった人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の両津勘吉は、40年間変わらぬ読者のヒーローだった。

　連載が始まったのは昭和51年。世間はロッキード事件の渦中にあり、7月に東京地検が田中角栄前首相を逮捕、師走を迎えて福田赳夫内閣が発足した。県内では4月に薬師寺金堂の落慶法要が営まれている。

　連載されていた週刊少年ジャンプは年とともに開きにくくなったが、「こち亀」だけは飲食店でも抵抗なく読むことができた。いつもそこにある安心感は、休載ゼロの実績があればこそだろう。

　奈良新聞は今年10月、創刊70周年を迎える。「こち亀」の連載が始まった昭和51年がちょうど創刊30周年だった。

　当時とは題字も社章も変わったが、「郷土の歴史と伝統を尊重し、県民の利益と幸福増進に尽くす」とうたう社是の精神にいささかも変わりはない。

　奈良県には奈良新聞がいつもある。県民がそこに安心を感じてくれるなら、それほどの幸せはない。目指せ両さん、である。(増)