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金曜時評

急がれる体質改善 - 編集委員 増山 和樹

 奈良市環境清美センターで、今年に入って4人の職員が相次いで逮捕された。市民が持ち込んだ自転車を盗んだり、公用車名目の給油でガソリンを横領するなど、容疑は極めて悪質だ。市の幹部は逮捕のたびに「市民の信頼を裏切る行為」として陳謝してきた。

 しかし、同センターに市民の信頼が醸成されているのか、そもそも疑問である。これまでにも、職員の長期にわたる病休など、繰り返し不祥事が明らかになってきた。「またか」と感じた市民が多いようなら、事態は深刻度を増している。

 奈良市が定めた職員の法令順守に関する行動基準には「自らの行動が常に公務の信用に影響を及ぼすことを深く認識するとともに、市民から信頼される職員であるよう、不断に公務員としての資質の向上及び倫理の高揚に努めること」とある。相次ぐ不祥事で環境清美センター自体が「そういう職場」とみられていないか。そうであるなら、そこで働く職員にとって、それほど悲しいことはない。

 7月に明らかになった同センター内のトレーニングルーム設置は、機器が市の予算で購入されたものであるにもかかわらず、職員の私的な施設のように公表された。職員の逮捕を受けた調査で市長の知るところとなったようだが、実は公認の施設だった。

 仲川元庸市長はトレーニングルームの設置を公表した会見で、「環境部の組織や風土、管理体制を合わせて問題がある」との認識を示した。一連の不祥事に厳しい姿勢で臨むのは当然だが、トレーニングルームを同じ枠で捉えたのは、市長自身に先入観があったからだろう。市のトップとして冷静な判断が求められる。

 トレーニングルームは駐車場の目的外使用などで撤去され、今後は改めて同センター内に設けるかが焦点となる。機器をそろえるなど、いったんは必要性を認めた施設であり、不要であるとするなら、相応の説明が必要だろう。市民感情も大切だが、そこで働く職員の感情をおろそかにして同センターの改革はあり得ない。

 深く根を張った同センターの不祥事体質は改善が急務である。天候に関わりなく市民のごみを集めて回る収集業務は激務だが、市の職員であるという立場に変わりはない。真摯(しんし)に働く職員もいて、市の環境は保たれている。良貨は悪貨を駆逐する。市長が一人一人の職員と向き合うところに改善の糸口がありそうだ。

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