昭和58(1983)年に発行された本「奈良いまは昔」(奈良新聞社刊、絶版)は、大正から昭和にかけての貴重な資料として高い評価を受けている。

　この時期に活動した奈良の文化人、北村信昭さんが新聞連載をまとめ、本人や祖父の太一氏が撮影した豊富な写真を掲載した当時の奈良を知る“お宝本”である。

　その本を縦軸に北村さんを紹介した企画展「『奈良いまは昔』展―好奇の人・北村信昭の世界」が、奈良市山陵町の奈良大学博物館で開かれている。

　北村さんが残した多数のコレクションを遺族が平成12年に同大に寄贈。浅田隆名誉教授によって蔵書・遺品の整理が進められ、それを引き継いだ同大学関係者の地道な作業により整理・分類された。

　展示では、文豪志賀直哉の直筆サイン本、洋画家赤松俊子(丸木俊)との書簡、撮影機材など77点が公開されている。

　会場では、撮影場所や時期が不明の風景や仏像の写真が多数掲示され、情報提供を呼び掛けている。何やら“夏休み超難解歴史クイズ”の様相で楽しい。入館無料。問い合わせは同博、電話0742(44)1251。(恵)