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国原譜

奈良の鹿愛護会の事務所には、頭に白い冠…

 奈良の鹿愛護会の事務所には、頭に白い冠を乗せたような鹿の剥製が飾られている。「白ちゃん」の愛称で親しまれたこの鹿は、昭和47年7月に交通事故で死んだ。

 絵本にもなった「白ちゃん」の物語は、何度聞いてもやはり悲しい。9歳でようやく授かった子鹿を交通事故で失い、「白ちゃん」は車に強い敵意を示すようになる。

 毎年のように出産する鹿が多いのに、「白ちゃん」の出産はこの一度だけ。それから子宝に恵まれることはなく、18歳の夏、自らも車によって命を落とした。

 春日大社参道脇の鹿苑では、春から夏にかけてたくさんの子鹿が誕生する。出産を控えて苑内に収容された母鹿と奈良公園にデビューするのが7月中旬だ。

 普段から通過車両の多い奈良公園だが、これからの時期、鹿の飛び出しには特に気をつけたい。母親が最初に道路を渡り、子鹿が後を追って飛び出すケースも増えてくる。

 子鹿に近づきたい気持ちをぐっとこらえ、脅かさないようそっと見守る。車の運転は徐行を心掛ける。人間側のちょっとした意識が、「白ちゃん」の悲劇を防ぐことにつながる。(増)

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