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金曜時評


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危機に先手を打て - 編集委員 松岡 智

2016年7月1日 奈良新聞

 4月14日以降、最大震度7の揺れが2度発生し、余震が続く熊本地震。東日本大震災から5年が過ぎ、震災に備える気持ちを新たにした約1カ月後の出来事だった。

 今回は災害での一地域の事業停滞が、国内経済、国民生活全体に影響を及ぼすことが複数の産業分野で浮き彫りになった。企業の事業継続の重要性が改めて示された。

 国は防災と併せ、企業の製品供給、サービスの停止が経済に与える影響が大きいことから、災害時の事業継続の意義への啓発を強化している。企業に対し、被害を受けても業務が中断せず、中断してもできる限り短期間で再開できるように、災害時の事業継続計画(BCP)の策定を求める。

 内閣府は平成17年以来、バックアップのシステム構築や仕事場、要員の確保といった、災害時の事業継続のガイドラインを提示。毎年実態調査も行っている。平成27年度の調査によれば、BCP策定済み企業は大企業が60・4%、中堅企業が29・9%、その他企業で32・5%となっている。

 では、その他企業より、さらに小規模な中小、零細企業の多い県内の状況はどうか。正式なデータはないが、関係者の話を総合すると前述の数字からはほど遠い状況と言える。ある経済団体では、BCP策定はほとんど進まず、BCPの意味、意義すら知らない会員もいるという。また、県は17年度から、関連の講演会や講座を毎年開いているが、企業の反応は鈍いらしい。危機に先手を打つ行動は、ビジネスチャンス拡大にも直結するだけに惜しいことだ。

 もちろん一方で、大手の下請け、孫請けでBCP策定が必須とされる企業も存在する。従業員の生命安全を考慮して食料の大量備蓄を行い、自治体との協力で地域住民の被災支援にまで踏み込む企業もある。

 企業の社会貢献にはさまざまな形がある。災害時にも滞らない事業継続で、直接、間接的に人々の生活を支えることも、その一つだろう。さらに一歩進み、災害時に従業員、地域住民に開かれた避難所的役割も果たせるなら、真の意味で地元に根ざした企業となり得る。同時に、自社への信頼、誇りから生まれる従業員の労働意欲の向上や、次世代を担う若者の心に刻まれる企業の魅力へとつながるに違いない。

 県内でもようやく、一部の経済団体が本年度の事業計画にBCP策定推進を盛り込んだり、個々の企業での策定が難しい部分を組織全体でカバーしようとの動きが出てきた。各企業、団体の動向を注視したい。

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