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金曜時評

推進の責任を問う - 編集委員 松井 重宏

 奈良市の新斎苑(火葬場)建設事業が先行き不透明感を増している。仲川元庸市長は同市横井町の山林を計画地として事業推進に意欲を示すが、市議会には同計画地について問題点を指摘する声が強くあり、見直しに応じない市長と対立。両者の主張は平行線のまま、かみ合わない議論が続いている。膠着(こうちゃく)状態を打開し事業を前進させるには何が必要か。改めて責任の所在を確かめたい。

 3月に行われた平成28年度予算の審議で議会が、市長提出の予算案から斎苑関連の事業費を削除した修正案を可決。これを不服とした市長が再議に付したが、議会は通常の過半数より多い出席議員の3分の2が賛成して修正案を再可決した。この時点で対応を問う「ボール」が議会から市側に投げられたが、仲川市長は独自の解釈を示して議会の意見をまともに聞かず、受け止められなかった「ボール」はそのまま、議論は空転に陥ってしまった格好だ。

 こうした中で仲川市長は、なかなか進展しない計画地の地元交渉とは別に、22日午後2時から市役所で市民説明会を計画。自ら街頭で広報ちらしを配るなど、多数の参加を呼び掛けている。特定の政策をテーマとして、市政トップが市民に直接説明する場を設けるのは異例だが、仲川市長は得意とする「幅広い市民との直接対話」で世論を喚起、議会の声に対抗する意図があるのかもしれない。

 一方、議会は、市民説明会より先に20日午後7時から市役所議会棟で議会報告会を開く予定。こちらは条例で「年に1回程度の開催」が規定されている会合で、毎年5月に開かれており、新斎苑問題についても報告されることになりそうだ。

 新斎苑整備について仲川市長は「昭和30年代から歴代の市長、議会も取り組んできた長年の課題」と説明し、その難問に自ら決着をつけると意欲的。ただ2期目の任期も残り約1年となり、結果を求められる中で、議会対応を軽視し、現在の計画地にこだわる姿勢は独善的な政治野心としか見えない。事業推進には地元合意が大前提。また計画地の適否をめぐる議論を議会との論戦の中で政治問題化せず、計画地周辺の自然条件や整備にかかる費用など指摘された課題を丁寧に検証し直さなければ。

 責任の明確化へ、仲川市長は6月定例市議会に向けて何をするべきかが問われている。市民説明会では市長の政治姿勢こそ説明される必要がある。

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