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金曜時評


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文化財への理解を - 編集委員 山下 栄二

2016年3月25日 奈良新聞

 三つの世界遺産のほか、県内には特別史跡、国宝など世界に誇る文化財が数多く存在する。県はこうした文化財を「文化資源」として観光振興、県の魅力向上に活用する方針だ。従来の文化財「保存」や「修理」に加え、「活用」に力を入れるという。具体的には、文化財の案内板設置や、仏像などを欧州で紹介する展覧会開催、文化財の修復・修理や発掘の模擬体験など多彩な計画だ。県の目論み通り、文化財で県の魅力アップは可能だろうか。

 全国3万人の消費者を調査した地域ブランド研究所の地域ブランド調査2015魅力度都道府県ランキングによると、本県は前年(6位)より順位を下げたものの8位と、近畿2府4県では京都(2位)に次いでおり、大阪、兵庫より上である。これまでも、文化・歴史遺産や自然環境が全国の人たちに高い評価を受けているのが表れた数字とみていい。ただ、「灯台下暗し」ではないが、その奈良の魅力に気付いていない県民が多いのではないか。

 文化庁の移転が決まった京都。世界的な知名度や経済力では奈良は京都に及ばないものの、文化的な魅力の深さでは決して京都にひけをとらない。奈良に関する著書の多い作家の関裕二氏は「ビジュアル版奈良1300年地図帳」(宝島社)の中の寄稿で、「『一度奈良にはまってしまうと、京都が色あせて見える』と、多くの知己がいう」と書き、奈良で「郷愁」を感じ、魂が打ち震えるほどの、懐かしさを感じてしまうという。そういう奈良ファンは全国に数多くいる。

 洗練された「雅(みやび)」の京都に対する奈良の魅力は、日本の原点ともいえる飾らない素朴さ。それを好む奈良ファンからすれば、文化資源を観光にも役立てるというと、底の浅い商業主義とアレルギー反応を起こす向きもあるだろう。開発と保存の問題と同じように、観光振興と文化財の保存とのバランスをいかにとるかが大きな課題の一つだ。県には説得力のある施策を展開してほしい。

 近くに由緒ある社寺や史跡、古墳が数多いにもかかわらず、その魅力を知らない県民があまりにも多い。子どものころからの郷土学習、また成人になってからの生涯学習で、文化財に触れる機会を多く持てるような取り組みが、一層必要だろう。県民自らが文化財への理解を深めていないと、その魅力を全国・世界へ発信することは難しい。

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