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金曜時評

中南和振興の核に - 編集委員 山下 栄二

 まれにみる激しい戦いとなった橿原市長選は、現職の森下豊氏が363票の小差で神田加津代氏を破り、3選した。奈良市に続く県第2の人口がある同市は、県中南和の中核都市であり、沈滞する県中南和の振興に果たす役割も大きい。森下市政の今後は市民だけでなく全県的に注目されている。

 選挙の最大の争点となったのは、近鉄八木駅南側のホテル・市役所分庁舎建設問題。ホテルが“公設・民営”であることから、「税金の無駄遣い」「民業圧迫」と神田陣営から攻撃を受け、現職苦戦の最大要因となった。折しも新国立競技場の巨額建設費が全国的な関心を呼んだ中、市民の間に一種の「ハコモノアレルギー」が広まったのではないか。

 森下氏も「市民に説明が行き届かなかった」と反省の弁を述べている。今後は市民の声を聞きながら事業を慎重に進めなければならないし、既存の民間宿泊施設と共存共栄を図っていかなければならないだろう。クリアしなければならない条件はあるとしても、外国人観光客を中心に増加する宿泊客をターゲットに、同市が中南和の観光拠点になるという構想自体には賛成したい。

 県内宿泊施設数は全国最低クラスであり、県の調査では日帰り観光客は増えているが、宿泊者数、観光消費額は減っている。名所・旧跡は豊富だが、魅力的な繁華街が乏しいからだろう。「ホテルだけ増やしても需要があるのか」と批判もあり、同市には具体的な観光施策が求められる。今井町、大和三山など市内の名所、旧跡をはじめ明日香村や吉野方面を範囲に入れるなら観光ポテンシャルは高いので期待したい。

 県南部は過疎化が深刻な問題となっており、若者の働く場所が少ない。民間の地方創生会議は地方において人口流出の「ダム機能」を果たす地方中核都市の構築を提唱しているが、県内でこの条件にあてはまるのは、県立医大・付属病院、県広域消防本部がある橿原市ではないだろうか。

 荒井正吾知事が県会答弁で「橿原市のホテル事業が成功すればいい」と異例のエールを送ったのも、観光振興に力を注ぐ自らの政策に合致しているとともに、中南和振興の拠点として同市に期待しているからではないだろうか。同市の雇用や経済波及効果が市だけでなく中南和全体に及ぶよう、森下市長には広域的な視野を持ってもらいたい。

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