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金曜時評

人材確保、新方策を - 編集委員 松岡 智

 今年の就職活動は学生の勉学時間確保を念頭に、国と経団連が中心となり、会社説明会や選考活動の開始時期が従来からそれぞれ約4カ月繰り下げられた。だが、表向きは解禁を守るふりをし、裏で内定を出す抜け駆け事例が横行。経団連と一線を画す事業者は堂々と解禁破りを行った。複数の経済団体トップは「中小企業にしわ寄せが来ている」と状況を批判。学生側からも、かえって就活期間が長期化しているとの声が上がった。

 結局、経団連も「学生が勉強できなくなり、中小企業がいい人材を採用できない問題が起きている」と認め、改善の検討をせざるを得ない事態となった。

 中小零細の多い県内企業への影響は、大企業中心の採用への流れや、就活期間長期化などが日程発表時から懸念されていた。県中小企業団体中央会によれば、同会の合同企業説明会への参加申し込みは、昨年を大きく上回ったという。採用に積極的な企業が増えていながら、人材確保に困難が生じている可能性は否めず、大手の思惑に振り回された感は強い。

 今後、よりいい人材を県内中小零細企業が確保するには、日程変更などに左右されないしくみを作る必要もあろう。

 同中央会は、企業と人材のマッチング機会や支援メニューの増加、内定獲得が遅れ気味の学生らへのケアの重要性を挙げる。チャンスは一度だけではないとの意識を求職側にも定着させ、ベストな出会いによる人材確保の機会をより広げること、求職者に県内で正規職員になる意識を持続させるための方策だ。

 また、県中小企業家同友会の平山雅英代表理事は、学生の大企業志向と、インターンシップ導入でも人材が確保できない現状を踏まえ、高校生へのアプローチ強化に目を向ける。さらに、キャリア教育の「出前授業」などで中学生段階での接点を増やし、企業が地域での存在感を示すことを説く。一方で、雇用者に経営指針をきちんと提示できる、企業側の体質改善の必要性も指摘する。これらは新たな取り組みでのヒントともなろう。

 企業の継続、発展には、定期的な採用で年齢構成のばらつきを抑えつつ、専門的な知識、技術を確実に後進に伝えていくことが不可欠。現在、県や各種団体が県内就労、定着に多様な取り組みを実践している。ただ、県内就労希望者が増えているとされる中、今一歩進んだ、長短期両面で人材確保を優位にする奈良独自のスタイル確立が求められてもいる。

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