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金曜時評

地道が開く可能性 - 編集委員 松岡 智

 政府の提唱する地方創生に県経済の活性化は不可欠だ。その中核を成す中小企業には、県外にも確固とした販路を形成する域外交易力が求められている。県は近年、中小企業の域外交易力強化の支援を目的に、関西、首都圏での商談会の開催、展示会への参加促進を図ってきた。

 海外への販路拡大支援にも着手している。中心は米国・ニューヨークのギフトフェア(現名称「NY NOW」)での「奈良ブース」の開設。2年前、全国の自治体に先駆けて取り組み始めた。

 県関係者によれば、家庭用品、ギフト等関連では北米最大級の同フェアは、完全バイヤー向け。品質がバイヤーの目に留まれば価格や商品供給力など、即座に商談に入る実戦的な場となっている。

 共同出展の形での参加企業数は1回当たり5社。少なく感じられるが、商品が外国で受け入れられる可能性、海外進出への本気度などを事前審査した結果だ。

 3回の出展を経て、県は海外進出への次のステップも本年度から用意する。国の地方創生目的の予算を活用し、海外見本市への単独出展と、海外販売拠点立ち上げの支援に約2千万円を予算化した。前者は任意に選んだ海外展示会への単独出展の補助、後者は海外事業所開設に向けた現地での市場調査、テスト販売への補助。育成から独り立ちを促す流れだ。

 現況は遅々とした動きにも見える。だが県は、段階を経て海外に進出する企業が一つでも出現すれば、追随する企業が必ず出ると考える。県担当者は「遠回りのようだが、これが近道」と断言する。

 結果を求める立場からはもどかしさもあるだろう。ただ、長期的展望に立てば、着実に同志の輪を広げる仕組みを形成するやり方も不正解と言えない。もっとも、矛盾する要素のようだが、ぶれないこと、臨機応変だけは堅持してもらいたい。

 目標年度を設け、適宜細かな修正は必要なものの、一定の成果が出るまでは他の自治体の動きなどに惑わされず、当初の方策を貫く姿勢が大切だ。一方で、海外進出への好循環が生まれ、追随企業の増加が見込める際には、大胆に支援予算をてこ入れするなど、流れを大きなものにしていく柔軟性も重要だろう。

 海外進出を目指す中には、海外での成功を逆輸入して国内での販路拡大を目論む企業もあると聞く。県関係者や企業の確かな手ごたえは、今は地道な動きが将来的に地方創生の原動力の一つになり得るとの期待を、大いに抱かせる。

 

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