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金曜時評

君子は豹変するか - 客員論説委員 小久保 忠弘

 統一地方選のハイライト、知事選挙の告示まで2週間を切った。4年前、東日本大震災直後の混乱と不安の中で、それぞれが地域の安全と幸福について将来を考えた選択だったのを思い出す。東北の惨禍を目の当たりにしつつ、自分のものとして真剣に取り組まねばなるまい。

 候補予定者の事前の動きが連日伝えられているが、ここへきて3選を目指す荒井正吾知事が、関西広域連合に「部分参加」する意向を表明した。これまで「屋上、屋を架すもの」と言い続けてきた広域連合について、防災と観光・文化の2分野のみ参加するのだという。

 関西広域連合は、(1)県の上に組織をつくることで手間もお金もかかる(2)大規模災害発生時やドクターヘリなど業務面でも連携で十分(3)地方自治の観点から広域連合は分権ではなく“集権”(4)県の特色・独自性を盛り込んだ施策が広域連合ではできない―の理由で参加しなかった。今も県のホームページにあり、非加盟で「県民の皆様にデメリットが生じることはありません」と言っている。

 「君子は豹変(ひょうへん)する」。一般には変節を非難する言葉で、悪い意味で使われているが、本来は褒め言葉だったらしい。1月に亡くなった直木賞作家・陳舜臣さんが「弥縫録(びほうろく)」(中公文庫)に書いている。「易経」に「大人虎変、君子豹変、小人革面」とあり、秋になると美しく変わる虎やヒョウの皮は高く売れるように、美しく変わるのが「進歩」。全く変わらないのは駄目。小人は面(おもて)を革(あらた)む=表情を変える程度がせいぜいだという。ヒョウはスピードが速く、その連想から、すばやく節(主義)を変えると誤って解釈されたのではないかという。

 知事が君子か小人かは別として、関西広域連合加盟については、もう少し説明がいる。「今後、関西広域連合に参加する必要があるという判断が可能になった場合には、その状況を見極めて、慎重に判断したい」という従来の見解からすると、なぜ今なのかも聞かせてほしい。

 いずれにしても告示直前の方針転換である。日本海海戦での敵前大回頭を思わせるような離れ業。砲弾の嵐を受けても勝つ見込みの方が強いと見たか。

 「愚直」を唱えてきた人が、ヒョウのように華麗に躍動するのも知事選の見どころとなった。この現職に挑む各位の政見、論戦に期待し、有権者の正しい判断を願うばかりだ。

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