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金曜時評

読書振興に施策を - 編集委員 松岡 智

 「めくる めぐる 本の世界」が標語の今年の読書週間(9日まで)。だが、県内の大型書店を巡っても、これといった取り組みが見られない。読書普及にさじを投げたわけではないだろうが。

 子供の読書離れは深刻だ。本年度の全国学力・学習状況調査によれば、学校の授業以外での1日の読書時間(平日)は、小学生では「10分以上30分未満」が26・5%で最多。「まったくしない」も約2割いた。中学生では「まったくしない」34%を含め、30分未満の生徒が全体の約4分の3を占める。ここ数年、数値は低位で安定している。県では、全国平均と比べ、さらに読書時間が短い。「まったくしない」中学生はほぼ4割に達する。

 平成22年度に文部科学省が設けた学識経験者らによる「国民の読書推進に関する協力者会議」は、読書環境改善に三つの提言をしている。読書を支える人の充実、地域ごとの読書環境プランの作成など、県でも生かせそうな部分がある。

 県内の教育現場でも、読書習慣定着に向けた取り組みがある。そこで芽生えた興味、関心をさらに深めてくれるのが、学校図書館だろう。必要なのは司書の存在。司書教諭はいても、法改正で努力義務となった学校司書の配置は、県内小中学校では全体の1・5~2割ほどでしかない。学校司書は法的な資格試験がない。書店関係者らも含めて多様な協力が得られれば、楽しさの提供はより充実する。

 一方、保護者が読書に親しんでいなければ、家庭での読書活動は進まない。もともとあまり読書習慣がなかった大人たちに、読書の面白さ、大切さを感じてもらう方策も欠かすことはできない。

 また、地域全体の読書活動を思えば、各地の公立図書館の位置付けは、より重みを増す。来場者増への仕掛けも必要だ。県内外で好例がある。五條市立図書館は地元高校との合同企画で10代で読みたい本の特集を行っているし、全国を見渡せば、貸出ゼロの本のフェアを展開する館もある。金をかけずとも、アイデア次第で耳目は集められる。

 さらに、こうした有益な実践例を他館、県民全体が共有できるシステム作りも不可欠。所蔵本の共有など、小規模館が協力し合える条件整備を進めてもいい。

 これらは予算の必要な事項も多い。行間を読み、無限の想像力を育む読書に投資すべきか否か。将来を見通した施策を熟考する予算編成の時期を迎えるだけに、あえて理想を示しておきたい。

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