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金曜時評

経費後払いが常識 - 客員論説委員 小久保 忠弘

 「号泣県議」で有名な兵庫県議会は政務活動費の不正使用批判に応えて、政活費を現行の50万円から1割減の45万円にするなどの条例改正案を9月議会に提案するという。テレビの前であれだけ派手なパフォーマンスを見せつけられた兵庫県民は、それで納得するのだろうか。

 辞任した前県議のほかにも、領収書コピーの使い回しや事務所職員として雇用した親族に人件費を支払っていた議員など、不明朗な政務活動費の使途が指摘される同県議会だ。改正案では減額に加え、支給を前払いから事後精算に改められる。四半期ごと会派に一括前払いするが、会派責任者と議会事務局がチェックし、適正なら個人に精算支給するという。

 会派内の慣れ合いにならないか、事務局の権限がどの程度か気になるが一歩前進であろう。既に宮城県議会は全国の地方議会で初めて政務調査費(現政活費)の後払い精算方式を導入している。ここには地元オンブズマンらによる監査請求や住民訴訟という地道な活動があった。

 民間企業では経費の立て替え払いは常識だ。出張など出費が高額であれば相応の仮払いを受けるが、不景気の折から必要以上に持たせてくれる会社はない。精算して余れば返し、足りなければ戻してもらう。議員も商売になり下がれば、こんな常識は想像もつかないのだろう。

 増税と便乗値上げによる物価高で庶民の生活は一段と苦しい。なけなしの所帯から納める税金を無駄遣いしてもらっては困る。まして政務活動費を「第二の報酬」とばかり生計に流用するような不届き議員は指弾されるべきであろう。

 そもそも「調査研究に資するため」とされていた政務調査費が、法改正により「その他の活動」も追加され、政務活動費と名称を変えたことから、拡大解釈する者が出てきた。当初から使途拡大は危惧されていたことで、政活費=生活費ととらえる不心得者が出てくることになる。

 いったん自分の懐に入ったものは出しにくい。聖人君子ならともかく、金銭は手にした瞬間に心が動く。だから公金には一層の透明性とチェックが求められる。領収書の添付などは基本の義務だ。議員の良識と倫理を疑うわけではないが、不正を防ぐには支給の後払い精算方式こそ望ましい。本県議員の政務活動費は他と比べて飛びぬけて多いわけではない。だが多寡はともかく「後払い支給」は県議会や奈良市議会から範を示せるチャンスでもある。積極的な議論を望む。

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