注目記事奈良県内の自治体異動名簿掲載

金曜時評

命を守る自覚持て - 編集委員 辻 恵介

 広島市安佐南区の土砂災害は発生から2週間が過ぎてなお、現場には土砂やがれきが山積し、行方不明の2人の捜索が懸命に続けられている。避難所では、なお約800人が不自由な生活を送っている。昨今の「異常気象」の続発を見れば、とても他人事とは思えない。

 私事ながら筆者は、昭和57(1982)年7月31日~8月3日の台風10号と低気圧に伴う「大和川大水害」を経験している。当時は大阪府の松原市に住んでいたが、大和川に注ぐ支流が逆流し、団地の1階部分が床上浸水した。外へ出るのにはゴムボートしか方法がなく、結局会社を3日間休んだ。一方、県内各地でも土砂災害などで16人が犠牲となり、王寺町内では国鉄の電車が冠水するなどした。

 この時の浸水被害を契機にして、大阪市内ではその後、長居公園の地下などを通る巨大な排水路「なにわ大放水路」が建設され、大雨・洪水対策が施された。

 松原市周辺のいわゆる河内平野一帯は、従来はため池が数多くあり、「遊水地」としての一定の役割があった。しかし、人口急増による宅地開発の波で、その機能はどんどん失われていたのであった。

 さて、平成23年9月の台風12号豪雨災害(紀伊半島大水害)から3日で3年になった。高知県東部に上陸した台風12号は紀伊半島に豪雨水害をもたらし、奈良で14人、和歌山で56人、三重で2人が死亡、3県で計16人が行方不明になった。広範囲で激しい雨が降り、気象庁が新たに特別警報を設ける契機になった。

 今なお10人が行方不明で、五條市では14世帯25人が仮設住宅などでの避難生活を余儀なくされている。

 一方で、復旧・復興事業が進み、被災直後は938人に上った避難者も、本年度中に全て帰宅可能となる見込みという。とはいえ、生活再建や心身の健康回復など、避難者を取り巻く環境の改善には、まだまだ時間がかかりそうだ。

 大水害の教訓を生かして、全県的に防災対策が進められているが、自治体や自治会など地域での取り組みとあわせて、今一度各家庭の中で、避難所の位置や避難ルートの再確認など、細かい打ち合わせをしておきたいものだ。

 テレビやラジオ、パソコン(インターネット)、携帯端末などの活用の仕方や非常時の電源確保、水や食料の備蓄など、点検しておくことが大事だろう。

 我が身や家族の命は、自分たちで守るという自覚が、今何より求められている。

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