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金曜時評

平和憲法を汚すな - 客員論説委員 小久保 忠弘

 まさに「兵は拙速を尊ぶ」のたとえか。思えば昨年12月、憲法が保障する取材報道の自由が制約されかねない特定秘密保護法を、国会審議を尽くさず強行採決で成立させた自公連立政権である。今度は憲法9条の解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を強行した。

 集団的自衛権は、他国への攻撃を自国攻撃とみなして反撃する権利である。自衛隊の活動は大きく変化し、初の武力行使に及ぶ可能性がこれまで以上に高まる。歴代内閣が堅持してきた専守防衛の理念を逸脱し、自衛隊の海外派遣も可能となる。

 このような国政の根幹に関わる大転換であれば、本来は選挙で国民に信を問うべきだ。それを与党協議だけで決められてはたまらない。報じられたように、むずかる公明党を脅し上げて閣議決定に持ち込んだ安倍晋三首相の剛腕であろうか。

 憲法9条が現実に整合せず、国際的役割を果たしていないというなら、まず憲法改正を問えばいい。ところが改憲には国会議員の3分の2以上という発議要件が必要で実現には制約が厳しいとみるや、手続きを省き解釈改憲を図ったのであろう。実に姑息なやり方で、議会や国民を軽視するのもはなはだしい。多くの地方議会や各種団体が反対を表明し、世論の大半が同意していない。

 「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」が閣議決定文の名称だという。安倍首相は「海外派兵は一般に許されないとの原則は全く変わらない。日本が戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなる」(1日の記者会見)などと強調してみせるが、疑わしい。内閣の裁量が拡大され、歯止め措置はなし崩しとなる懸念がある。

 就任以来、一連の安倍首相の言動からは平和志向が感じられない。既に4月には「武器輸出禁止三原則」の緩和を発表し、戦争準備へ向けて着々と環境を整えているかにも見える。先月、パリで開かれた陸上兵器の国際展示会に日本が初めてブースを設け、国内兵器メーカーなど13社が参加した。その優秀さに各国から注目が集まったという。まさか軍需産業も動員してアベノミクスを成功させようというわけではないだろうが、危うさが伝わる。それは首相をはじめ内閣や党のメンバーが戦争を知らない世代で固められ、身をもって惨禍に接していないからだろう。「なし崩し的に『いつか来た道』を歩んでいないか、しっかり監視せねばなるまい」(2日付本紙「國原譜」)というのが我々の立場だ。

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