特集奈良ラーメン探検隊活動中!

金曜時評

成算は十分なのか - 編集委員 増山 和樹

 県都・奈良市と第二県都といわれる橿原市で、行政主導によるホテル誘致計画が進んでいる。前者は県、後者は橿原市によるものだ。いずれも正念場はこれからで、計画の成否はまだ見えない。

 奈良市三条大路1丁目の県営プール跡地は隣接する奈良署の跡地を含めて約3・1ヘクタール。県の計画では、天平時代をテーマにした「ミニテーマパーク」を誕生させる。核になるのが大型ホテルで、国際会議も開けるコンベンション施設を併設する。

 平城京をイメージした空間では、古代衣装で過ごしたり、当時の貨幣「和同開珎」を模した地域通貨で買い物も楽しめるという。

 国際会議場やテーマパークの機能を持たせる以上、施設に至る導線の環境や周辺のイメージづくりも欠かせない。現状でそれが整っているかといえば「NO」だろう。

 東大寺や正倉院には天平時代の生きた遺産が残る。平城宮跡に復元された大極殿や朱雀門は、専門家が一から考証し、材料も厳選された。本物を求めて奈良を訪れる観光客の目に、テーマパークは安っぽく映らないだろうか。

 それだけに、広範囲の環境整備が一層大切だが、県と奈良市の間には随分距離があるように見える。仲川元庸市長は4月の記者会見で、県営プール跡地の活用について、荒井正吾知事と「直接話し合ったことはない」と述べ、静観の構えを示した。

 どのような施設になるにせよ、県営プール跡地の活用は周辺のイメージづくりと一体で考える必要がある。県と市の連携はいずれ求められる時期がくるだろう。今からテーブルを設けて早過ぎるということはない。県事業とはいえ、跡地は市役所の正面に広がり、市が管理する宮跡庭園(特別史跡)もある。

 一方、橿原市が近鉄大和八木駅前の市有地に計画しているホテルは分庁舎と一体型で、市の実施方針に沿ったプランを民間から公募する。同じ場所へのホテル誘致は以前にも計画されたが実らなかった。採算面など、厳しい面があるのは確かだろう。民業圧迫の懸念についても、市の説明は希望的観測に聞こえる。

 規模が大きくなるほど、思惑がはずれた場合の舵は効きにくい。いずれの計画も、県内の観光事情に大きく関わるだけに、どの程度成算があるのか、議論を尽くして臨んでほしい。

特集記事

人気記事

  • 奈良の逸品 47CLUBに参加している奈良の商店や商品をご紹介
  • 奈良遺産70 奈良新聞創刊70周年プロジェクト
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド