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金曜時評

三原則、慎重審議を - 編集委員 辻 恵介

 STAP細胞をめぐる理化学研究所と小保方晴子さんとの〃攻防〃、また、その前の8億円借り入れ問題をめぐる、みんなの党・渡辺喜美代表の辞任問題に世間の関心が注がれたために、あやうく忘れるところだった。

 1日に政府が、武器や関連技術の輸出を基本的に禁じてきた「武器輸出三原則」を全面的に見直して、新たな輸出ルールとして「防衛装備移転三原則」を閣議決定した件のことである。実に47年ぶりのことで、安倍晋三首相が目指す集団的自衛権の行使容認と並んで、安全保障政策の一大転機となる、極めて重要な問題である。

 今後の国の行く末を左右しかねない重要な問題が、「閣議決定」という形でなされたことに、強い不安や疑念、危惧を覚える声はあちこちで聞かれる。

 これまで打ち出してきた経済政策の進展が世論の支持を集め、政権運営を安定したものにしてきた。だが、4月からの消費税増税によって、景気や雇用といった経済運営の見通しが不透明なものになり、アベノミクスにかげりも見えてきた。その恩恵は、大企業の従業員の給与や待遇改善などには一定つながったものの、それが中小企業にまで十分には届いていない、というのが世間の実感であろう。

 「武器輸出」という単語は、「防衛装備移転」と巧みに書き変えられた。日本語の語いが豊富な、優秀なブレーンの存在が想像できる。歴代の自民党内閣が、国是として大切にしてきた平和国家としての方針が崩されていく。このところ、安倍政権の政策が、かなり性急な動きになっているように見えて仕方がない。

 輸出先の広がりによって、国際紛争の助長につながる恐れはないのか。武器(防衛装備)が回り回って想定外の国へ渡る危険性はないのか。これまで日本が、戦後の歩みのなかで築きあげてきた平和国家としての「メイド・イン・ジャパン」の〃ラベル〃への世界の評価がどう変わるのか―不安が募るばかりだ。

 安倍首相は早速、7日のオーストラリアのアボット首相との会談で、防衛装備品の共同開発推進で合意した。潜水艦の関連技術開発が、第1弾となるかもしれないという。

 いまだに世界各地で、さまざまな紛争が起きている中、その武器が使われた場合、テロや報復の対象にならないという保証はない。透明性の確保や、運用方法など慎重な国会審議が求められている。

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