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金曜時評

目標は地域の自立 - 論説委員 北岡 和之

 今月19日に荒井正吾知事が発表した県の新年度予算案。平成26年度と合わせて25年度2月補正を一体として編成した。発表会見で、「一言で表せばどんな予算ですか」と記者に聞かれて荒井知事の口から出たのは「経済の構造改革」。こうした言い方で県民にうまく伝わるのか、かなり気になったらしく「自立的な経済」「お金がもっと回るような経済体制」などと、思案しながら何度も言い換えて説明を試みた。

 結局、最後はやはり「経済の構造改革」で終わった感じだったが、抽象語を分かりやすく説明しようとする熱意は十分に当方へ伝わってきた。「分かる人には分かる」式の突き放した言い方は避けようとする県トップとしての姿勢は、僭越(せんえつ)ながら高く評価させていただきたい。

 そういえば、この会見中に僭越という言葉を知事自身が使ったところがあった。経済の構造改革に関連して、県と企業などが一緒に研究して研究開発に投資・助成することや人材育成を応援することなどの意義を指摘。その上で、こうしたことは「商工会とか商工会議所に期待されている機能だったが、そういう機能が全くないように思う。各地とも寄り合いになってしまっている」と言ってのけた。この発言にはびっくりした。これはどう見ても“戦闘モード”ではないか。

 イノベーション(革新、新機軸)はどこから発生するか。知事の「県庁から発生せなしょうがないんじゃないか」という思いが「きばった言い方で僭越ながら」となった。「県が気合を入れてもいいでしょう。引っ張るリーダーが要る。リーダーは県であってもおかしくないのでは」など、どの言葉にも強い決意がにじみ出ている。

 地域が、もはや大都市や生産基地の発展には頼れず、内発的に経済を興し、自立的な地域を目指さねばならない状況にあるという判断が正しければ、知事の指摘と決意に秘めたものの重みは納得せねばなるまい。

 先日も別の欄で紹介したが、会見の中で知事は「方向をよく見定めて、もくもくするというスタイル」という言い方もした。つまり、荒井知事は戦闘モードには入っているが、別にけんかを売っているわけではない。状況判断について、方向性について、大いに論議をしようということだと思う。

 商工会や商工会議所などは、期待されている機能が働いているのかどうか、働いていないとすればどうすればいいか、に答えなければならない。また、開会した県議会の2月定例会で、新年度予算案に示された状況判断や方向性について、各議員は問題がないかどうかをよく検討しなければならない。全ては県民のためであり、その一点をめぐって異とするところは大いに主張してほしい。

 荒井知事はボールを投げた。県経済界も政界も、これに答えねばなるまいが、まずは2月県会での活発な論戦を求めたい。

 

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