国原譜

ジョークのたぐいに違いないが、若草山に…

 ジョークのたぐいに違いないが、若草山にモノレールを付ける計画があるらしい。プランを立てた人はよほど乗り物好きなのだろう。

 「歩行者支援」などと役所好みの言葉にだまされてはいけない。若草山は古来、猿沢池や五重塔と並ぶ奈良を代表する風景だ。西側から見えようと見えまいと設置そのものに違和感がある。

 たしかに三重目の山頂まで歩くと疲れるが、それも景気の美しさと引き換える楽しみの一つ。利便重視は時代に逆行する考えだ。第一に観光客はがっかりしよう。

 「あまのはらふりさけみれば」と阿倍仲麻呂が詠んだ古都のイメージは一本のモノレールで壊される。たぶん全国ニュースになって「開発志向の田舎者」と笑われよう。

 そんな予算があるなら、台風で壊れた滝坂道の修理や磨崖仏の保全、樹木の病害虫防除に費やすべきで、山頂へのアクセスはバス便の復活、登山道の再整備で済む話だ。

 千古の神域に隣接する場所で遊園地まがいの乗り物は不要。屋上に屋を架すとはまさにこのことだ。まさか「夢の若草リニアモーターカー」とでも名付けるのですかね。(コ)

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