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金曜時評

被害事例共有化を - 編集委員 辻 恵介

 県消費生活センターはこのほど「平成24年度の消費生活相談の概要」を発表した(24日付1面、27日付4面既報)。そこからは社会的弱者である高齢者が、さまざまな形で的にされている実態が浮かび上がった。

 相談件数は4458件(同センター3266件、同センター中南和相談所1192件)で、前年度より612件(12・1%)減少したものの契約当事者が60歳以上の相談は年々増加、同年度は全体の32・0%に達した。

 特徴的な事例を見てみると、高齢者を狙った「健康商品の送りつけ商法」に関する相談件数が急増。平成20年度4件、21~23年度は毎年10数件だったのが、24年度には一挙に75件に激増。60歳以上の契約者が81・3%を占めた。さらに25年度は4~6月の3カ月間で、前年度1年間の相談件数を上回る96件の相談が寄せられたという。

 悪知恵の働く“その道のプロ”たちが、比較的簡単に成功できると情報交換でもしているような気さえする。「健康」という言葉に惑わされないこと、なかなか難しいが、こちらの迷いを察知されないことが肝要だろう。

 センターでは、身に覚えがないのに一方的に「商品を送る」と言われたら「必要ありません」とはっきり断るようアドバイス。承諾していないのに商品が来た場合は代金の支払い義務はなく、受け取りを拒否し、断り切れずに承諾して商品が届いてしまってもクーリング・オフできる場合があるとして、消費生活相談窓口(消費者ホットライン0570―064―370)への相談を呼び掛けている。

 高齢者の場合、電話勧誘や訪問販売による被害が多いが、直近の事例を見てみよう。

 奈良市の無職女性(72)は、28日午前、自宅で市役所職員を名乗る男から「医療費の過払いで、払戻金がある」という内容の電話を受けた。女性は、男から指示されたスーパーへ行き、指示通りに現金自動預払機(ATM)を操作して、現金約40万円を振り込んでしまったという。奈良市内では、還付金名目の振り込め詐欺被害が同日だけで5件(被害総額約230万円)も発生したが、被害者や相談者の多くが60歳以上の高齢者だった。

 「電話に出ないことが最大の被害防止策」とも言われており、「留守番電話設定」にするのも一つの手だが、1人で判断しないで周囲に相談することが大切だろう。

 そのほか、「社債」「未公開株」「ファンド型投資商品」といった投資勧誘の被害も増加。おいしい話には、乗らないことだ。

 お年寄りの被害者が、再び狙われるケースも多く、消費者庁では過去に被害を受けた10万人のリストを2014年度に独自に作成し、個別に注意を呼び掛ける方針という。

 できれば、被害事例をチラシにして自治会などで配布し、情報の共有化を図り、お年寄りを孤立化させないという意味でも、これを契機に声を掛け合う取り組みにしていければ、地域の防犯にもつながるのではないか。

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