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金曜時評

戦争の歴史に学べ - 論説委員 北岡 和之

 あの敗戦から68年。広島、長崎に投下された原爆の記憶も新たに、また「8月15日」がやって来る。戦争の廃絶と世界の平和への決意を再確認する大切な日だ。

 参院選の前には、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長が従軍慰安婦をめぐり「慰安婦制度が必要なのは誰だって分かる」、参院選後には麻生太郎副総理兼財務相が憲法改正に絡んで戦前ドイツのナチス政権を引き合いに出して「あの手口を学んだらどうか」。こうした発言が私たちの政治に対する警戒心を呼び覚ます。「8月15日」を考えながら、これらの発言を記憶にとどめたい。

 奈良には米軍による原爆や「じゅうたん爆撃」などによる大きな戦災はなかった。だが当然ながら、戦争の爪痕が無かったわけではない。それどころか、天理市を中心に周辺が焦土と化した可能性さえあったというと、誇張に過ぎるだろうか。

 通称「柳本飛行場」。天理市内で戦時中に慌ただしく建設されたこの飛行場は「大和海軍航空隊大和基地」といい、50機近い戦闘機「ゼロ戦」が配備されていたこともあったという。今も、所々にかつての基地跡が残る。

 ここへ、「本土決戦」に備えて軍の最高司令部にあたる「大本営」を移転する計画もあったらしい。昭和20年3月からの「大阪大空襲」では、奈良側から生駒山越しに大阪の空が真っ赤になっているのが見えたという。もっと戦争が長引いて、大本営が県内に設置されるような事態になっていたら、天理市周辺も米軍の猛烈な攻撃にさらされたかもしれない。そう想像すると、ぞっとする。

 良い戦争、正義の戦争も悪い戦争、間違った戦争もない。すべての戦争は廃絶されなければならない。たとえ理想・空想にしか見えないにしても、この思いから後退してはならないと信じる。それがあの敗戦を教訓として生かす最善の道ではないだろうか。

 東アジア地域において、中国や韓国、北朝鮮ばかりでなく、わが国も軍備を強化しているように見えることは憂慮される。

 つい最近では、6日に進水したばかりのヘリコプター搭載の護衛艦「いずも」が話題になった。全長245メートル、排水量約2万トン。とにかく大きい。報道された画像で見る限り、形は航空母艦だ。旧日本海軍の戦艦「大和」が全長263メートル、敗戦後に米軍に接収されて太平洋で原爆実験にも使われた戦艦「長門」でも全長225メートル。新たな“兵器”が誕生するにつれて戦争の緊張も高まるのではないか。そう懸念されてならない。

 憲法改正論議や集団的自衛権をめぐる論議がどんな展開になっていくのか、政治に任せてしまうのではなく、私たち一人一人が自分で考えよう。戦争が常にあった明治維新から昭和20年8月15日までのわが国の歩みとともに、現在までの変遷も振り返り、これからどう進めばいいかを考えよう。そのため、まずは「8月15日」の記憶を受け継ごう。 

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