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金曜時評

公約づくりが難題 - 論説委員 北岡 和之

 各政党が「政権再交代」後の政治決戦の場と位置付ける夏の参院選だが、任期満了まで3カ月ほどとなった今も、県内もいたって静かだ。選挙戦にも深く関わる国会での論戦が続いていることが、大きく影響していると思われる。立候補予定者も、どのようなスタンスで有権者の方へ踏み出していけばいいのか戸惑っているようにみえる。

 衆院の小選挙区定数是正にしても、環太平洋連携協定(TPP)への参加交渉にしても、さらには憲法96条改正論議にしても、政党・政治家だけでなく国民=一般有権者の中で論議が分かれていることが、現在の情勢をよく示していると思う。

 加えてつい最近の話題として浮上してきた、中国や韓国が批判を強めている閣僚の靖国神社参拝をめぐっても、国民の意識は分散・拡散しており、これら数々の難題を抱えた中で次期参院選に向けた選挙マニフェストをまとめる苦労は、十分察せられる。

 天下分け目の政治決戦の場となる選挙だからこそ、慎重にならざるを得ないのだ。

 こうした状況では、各政党は、だからこそ早く決めるという判断と、だからこそ時間をかけて論議を尽くすという考え方の二つに分かれる。このせめぎ合いから生まれてくるものが、有権者の投票先を決めていく。

 安倍晋三首相などから一気に参院選の争点へと浮き上がってきたのが、国会発議要件を緩和する憲法96条改正に関する論議。これの先には、憲法9条をどうするかを中心とした憲法改正があるのは論を待たない。

 これまでも私見として「憲法を変えてはならない」とは思わないと述べてきたが、国民の意思で憲法を変えていくのは当然のことだと考える。ただ、96条改正というのは少し“邪道”な方法ではないかという感じもする。正面からどういう憲法をつくりたいのかを提示して、じっくりと世論喚起していけばいいのではないか。

 憲法9条に触れるとなれば、よくよく踏まえておかねばならないのは、あの太平洋戦争についての国民の認識がどのような現状にあるかの正確な把握だ。国民の共通認識としていいのはどの程度か、どの段階にあるかを正しくつかまえていなければ、政党・政治家の憲法論議は暗礁に乗り上げるに違いない。

 あの戦争とは何だったのか、自国の戦死者を追悼することと他国の戦死者の追悼とはどう関わるのか、アジア各国の認識はどうなのか。そんな幅広い視野をわが国は求められているのだと思う。そしてわが国は、さまざまな要求に応えられる実力と国民性を備えていると信じたい。わが国が持つべきは、国家間の対立を乗り越えていく「世界視点」ではないかと思うが、どうだろう。

 参院選の争点として、各政党が選挙公約をまとめるのはもう少し先になりそうだ。どんな公約が出てくるか、有権者は真剣に、そして楽しく見守っている。

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