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金曜時評

寝耳に水の決戦へ - 論説委員 寺前 伊平

 政局は14日の党首討論で、一挙に解散・総選挙に向け動き出し、きょう16日にも衆院が解散し来月4日公示、16日投票の短期決戦が確定した。「決める政治」を前進させた野田佳彦首相の決断に一定の評価があったことは否定できないものの、民主党内では選挙体制づくりなどに緊迫した情勢は変わりない。政権の座を視野に入れる自民党や他の政党も準備不足は否めず、まだ決まっていない候補予定者も含め、その動向から目を離されない。

 野田首相が衆院解散を早めたのには、まず第一に地方自治体の財政運営に必要な赤字国債発行のための特例公債法案が今国会で成立するメドが付いたこと。第二に衆院小選挙区の「1票の格差」是正のための「0増5減」の法改正を実現させ、来年の通常国会で大幅な定数削減を図ることの確約を自民、公明から取り付けたためだ。

 「策を弄(ろう)しない」政治姿勢を常とする野田首相は党内の反対勢力と自民、公明両党からの「近いうち解散」の攻勢による板ばさみの中で政権運営の手詰まり感から沈思黙考。自ら提案した党首討論での論戦で、解散してもいい条件を引き出した格好だ。

 野田首相は党内の「野田降ろし」を回避しつつ、第三極勢力結集のための時間をかけさせないことも考え合わせ、抜群のタイミングを計って正面突破したに違いない。

 政権党の体たらくとともに、他の既成政党への期待感が薄れる中で新党が次々と誕生した。第一ステージでの民主党離党組による「国民の生活が第一」(小沢一郎代表)や「日本維新の会」(大阪市長の橋下徹代表)に続き、13日には第二ステージとして石原慎太郎・前東京都知事と「たちあがれ日本」代表の平沼赳夫衆院議員が共同代表となる「太陽の党」が発足したばかりだ。

 衆院選挙の日程が決まったことで、この後の第三ステージは、「日本維新の会」「太陽の党」が早急に政策一致を見い出し、「みんなの党」(渡辺喜美代表)を含めた第三極勢力の結集にこぎつけることができるのかどうかに関心が移る。

 奈良県内も、中央の動きに呼応して緊迫感が走っている。とりわけ、今選挙で“台風の目”とされている「日本維新の会」の動きを意識せずにはおれない。近畿各府県の選挙区には候補者を送り出す基本姿勢はくずしておらず、人選での柔軟路線に転換して候補者擁立を急いでいるようだ。

 「日本維新の会」が県内4選挙区すべてに候補者を擁立した場合、比例近畿での復活当選を考え合わせ、当落ラインでの混戦が予想される。民主、自民、日本維新の会による三つどもえか、2区にいたっては「国民の生活が第一」も加わる“四つどもえ”の選挙戦突入もありえる。

 いずれにしても、冷え切っている経済を立て直すデフレ克服策、脱原発政策、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉への参加の是非ーが選挙の争点となることはまず間違いないだろう。各政党とも、まずマニフェストづくりを急ぐとみられるが、激しい選挙戦の中で有権者には政策の中身をしっかりと届けてほしい。

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