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金曜時評

政党を見極めよう - 客員論説委員 小久保 忠弘

 米国大統領に民主党の現職バラク・オバマ氏が再選された。共和党候補と接戦の末の勝利。4年間の実績が評価されたわけだ。

 今から150年も前、坂本龍馬ら幕末の志士は、米国の大統領が「人民の入れ札(投票)によって決まる」と聞き、デモクラシーの故地に強い憧れを抱いたという。国を挙げてリーダーを決める運動の熱気に、わが国の停滞する政治の現状と引き比べ、龍馬ならずとも羨望(せんぼう)の念を抱く人も多いだろう。

解散総選挙をめぐる政局である。野田佳彦首相の言う「近いうち」を信じるなら、年内か年明けか、いずれにしても遠くないうちに選挙は行われる。特例公債法案の成立や衆院の定数是正・削減など「必要条件」さえ整えば決断するらしい。

 だが政権も末期になると、勝手に船底に穴を開けるような閣僚が出てくる。暴力団との関係を週刊誌に暴かれた法務大臣が更迭され、文部科学大臣は審議会の答申を覆し、3大学の開設を不認可にしようとした。前代未聞の暴挙に猛反発を食らうや、あわてて撤回した。支持率が10%台に落ち込んだ政権を、みずから沈没させるのかと疑いたくなる面々だ。そんな人事を行った首相の見識と責任も問われよう。

 だから嗅覚の鋭い滝実法務大臣などは、先行きの危うい船に乗りたくはなかったのだろう。再登板は「ごくろうさまです」と言うしかない。

 3日付の奈良新聞に載った民主党の広告では、2009年マニフェストをはじめとした3年間の政権運営・政策進捗状況に関して、国民の皆さんとお話ししたいとし、10日から全国11カ所で報告会を開催するとあった。野田首相は「できなかったことは真摯に反省し、お詫びし、その理由も明らかにして次につなげます」と述べている。

 もはやこの期におよんで、時すでに遅しというべきであろう。消費税増税をはじめ重大な公約違反は問われるべきだ。早急に選挙で決着をつけたほうがいい。政権は、あらゆる局面で詰みまくっているし、人心は離れている。自公がいいか、「第三極」か、その他か、はたまた民主のままでいいのか。国民は選挙権を行使して進路を託したいはずだ。

 さらに、一人勝ちした巨大与党にいったん政権を預けてしまうと、コントロールが利かず、国民の手の届かないところに行ってしまうことを思い知らされた。まるで三歳児に刃物を持たせるような危うさが民主党政権にあった。

 刃物といえば、150年も前の風情で血刀を振りかざすような懐古的勢力もある。いまは1人のスターが家来を引き連れ、大言壮語する時代ではない。地域には地域の、固有・個別の事情がある。便乗して他府県人に迎合したり内応するような手合いは論外だが、選挙に当たっては地元の活力と郷土の繁栄に力を尽くす党派を見極めたい。

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