特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

世代交代への決断 - 編集委員 辻恵介

 毎年、12月が近づくと、その年の「流行語大賞」のようなものが相次いで発表される。少し早いが、プロ野球界では大物選手たちの引退が相次いだことから「引退」がノミネートされるかもしれない。

阪神の鉄人・金本知憲選手をはじめ、城島健司(阪神)、今岡誠(ロッテ)、小久保裕紀(ソフトバンク)、石井琢朗(広島)といった、一時代を築いた、記録にも記憶にも残る名選手ばかりだ。

元オリックスで米大リーグでも活躍した田口壮や、オリックスの北川博敏選手も忘れられない。北川選手は、近鉄という球団があった時代の2001年9月26日の対オリックス戦で、「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打」を放ち、奇跡のヒーローとなった。長いプロ野球の歴史の中でも史上初の快挙で、近鉄は12年ぶり、そして最後のリーグVを決めた。プロ野球が、熱かった時代の話である。

 さて、目を政治の世界に転じてみると、水面下の深く静かなところで、解散総選挙への動きがより活発化してきているようにも思える。そこに、引退する県関係議員もからんでくる。

 民主党では、滝実衆院議員(74)=県2区選出=が、4月の段階で政界引退を表明。6月の野田第2次改造内閣では法相に就任。ベテランらしくそつなくこなし、大臣という最後の大きな仕事を成し遂げた。

 16日の同党常任幹事会で、2区の後継者として百武威氏(37)が、次期衆院選の公認候補に内定した。知名度アップも含め、これからの戦術が注目されるが、無投票で県連の新代表に決まった吉川政重衆院議員(49)=県3区=の手腕が問われることになろう。

 一方、自民党では「前幹事長代行で、同党県連会長も務めた田野瀬良太郎衆院議員(68)=県4区=が、今期限りでの引退の意思を固めた」と12日付の本紙などが報じた。報道が地元説明より先行した所もあって、混乱もみられたが、昨日17日に記者会見を開いて正式に引退を表明した。

 後継には既に次男・太道氏(38)の名が挙がっているが、世襲批判を避ける意味合いもあって、県連主導で公募の形がとられる。

 平成5年の49歳、衆院議員初当選時の田野瀬氏の選挙ポスターには「時代を変える!!政治を変える!!」とあったが、それがどこまで実現できたのか。約20年にわたる国会議員活動では財務副大臣、党総務会長など要職も務め、また県南部の振興発展にも尽くしてきた。2、3年前から世代交代のことを考えていたというから、熟慮の上の判断だろう。

 引退―人にとって、それはとても重い決断である。政治家は特に多くの人たちとかかわりがあるため、影響は大きい。滝氏、田野瀬氏の労をねぎらいたいが、これからも激動の時代に生きる、政治家の“後輩たち”に、貴重な体験を生かした適切なアドバイスなどしてほしいものだ。

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