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金曜時評

足元からの復権を - 編集委員 松井 重宏

 韓国の対日強硬姿勢に国内世論が反発を強めている。尖閣諸島をめぐる対中国外交も併せて野田政権の政治力が厳しく問われる場面だが、隣国との間で領土問題が相次いで噴出する背景には、近年急速に進む東アジアの経済情勢の変化も指摘されそうだ。後退する日本の影響力。経済大国を支えてきた大企業の凋落(ちょうらく)が著しい。

 そうした中で、総合家電メーカー大手、シャープの業績不振が県内にも暗い影を落とし始めた。液晶テレビなどに続き、新たな収益源として期待された太陽電池も国際的な価格競争に押され、事業の見直しに着手。同社の葛城工場(葛城市)で太陽電池の一部生産が中止された。希望退職の募集などによる社員の大規模削減では同工場も対象に含まれるとみられ、今後も主力取引銀行からの支援融資に伴うリストラが進めば、さらに県内事業所への影響拡大が懸念される。

 ただ日本の、地域の経済力は大企業の浮沈だけに左右されるわけではない。むしろ景気の足元を下支えする中小、零細企業や消費動向が大企業の活性化にも強く影響する。そう考えれば今、地域で可能な施策、地域で取り組むべき対策も見えてくる。

 特に急ぐべきは自営業の不振脱却。今春発表された平成22年国勢調査の産業等基本集計によると、従業上の地位別就業者数で県内の自営業主(家庭内職者を含む)は5万9512人と前回調査(平成17年)より18・2%も減少、全国平均の15・7%減を大きく上回った。このうち雇用人がいる事業主に限って見れば22・2%減とさらに落ち幅が大きい。

 長引く景気の低迷、自営業主の高齢化などで事業を閉じるケースが増えているのだろうが、それでも福祉分野など業種によって温度差は大きく、インターネットの活用など新たな開拓余地も生まれている。人口減少の時代に実数をプラスにするのは困難でも、行政や経済団体が創業支援の環境を整えることで減少率を抑え、元気な自営業主を増やすことは可能に違いない。

 日本政策金融公庫奈良支店がまとめた平成23年度の県内創業融資動向調査によると、融資件数は22年度に比べ18・7%も減少、3年連続で前年度を下回った。ただ今年4~6月期の融資実績は前年同期比25%増と明るい兆しも見えている。

 一方、県の創業支援融資(利子補給)の利用は、決算が確定している平成21年度が貸付枠4億円に対して貸付実績24件、1億3320万円、22年度は枠を12億円に増やしたが実績の伸びは小幅にとどまった。これでは大阪市の橋下市長らが仕掛ける地域間競争に県が生き残れるとは思えない。大胆な規制緩和や従来の手法を踏み越えた施策も必要だ。

 外交上の摩擦で排他的なナショナリズムをあおられるのではなく、競争心や対抗する気概を幅広く育てていかなければ、日本と地域の復権は果たせない。

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