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金曜時評

14歳の未来を守れ - 編集委員 辻 恵介

 ロンドン五輪は、きょう27日(日本時間28日未明)に開会式を迎える。柔道男子の穴井隆将ら県出身選手をはじめ、日本選手の活躍が大いに期待される。ありふれた言い方ながら、ベストを尽くして悔いの残らない戦いをしてもらいたいものだ。

 五輪で思い出すのは、1992年バルセロナ大会の競泳女子200メートル平泳ぎで、日本人の五輪史上最年少となる金メダルを獲得した岩崎恭子選手のこと。当時14歳で、レース後の「今まで生きてきた中で、一番幸せです」というコメントは、日本の五輪史における最も有名な談話となった。実に晴れやかで、さわやかだった。

 同じ中学2年生でありながら、陰湿ないじめによって自殺に追い込まれた大津市の中2男子のケースは、何とも痛ましい。いじめの現場を目撃しながら、対策を講じなかった先生、いじめの存在をなかなか認めようとしない教育長…。一体、どこを向いて仕事をしているのか、仕事を増やしたくないのだろうなあ、などと怒っている国民は多い。

 大津市長が25日、遺族に直接謝罪したのは、一歩前進と言えなくもないが、こうした世論に敏感に反応しただけ、との声もあり、まだまだ不十分。教育現場が心を入れ替え、体質を変えない限り、遺族も納得できまい。再発防止のための具体的な施策を実行することが、前途を絶たれた男子生徒への、せめてもの責任の取り方の一つではないか。

 他府県の話と思っていたら、県内でも桜井市の中学2年の女子生徒に対するいじめ事件が24日に発覚した。6月19日の下校時に同級生の女子6人に待ち伏せされ、うち1人に腰や足を蹴られるなどして全治5日間のけがを負ったという。家族が翌日、桜井署に被害届を提出。同署が受理し、傷害容疑で捜査していることが分かった。

 学校側によると、被害生徒は昨年5月から同級生ら複数の女子から暴言を吐かれたりする被害に遭い、父親から学校へも連絡があったが、その後もトラブルは続いていたという。市教委も被害生徒に関わるトラブルを12件把握しながら、これまで「いじめ」として対応していなかったようだ。

 いじめをいじめとして認めようとしない頑迷な思考や体質、成り行き任せ、事なかれ主義…、どこの教育現場も同じとは思いたくないが、反応や動きの鈍さは見事なまでに共通しているように見えてしまう。

 一方、県は早期に検証チームを立ち上げることを25日の定例会見で荒井知事が明らかにした。知事は「学校の中での犯罪行為を直視して考えないといけない。加害者も被害者も未成年のケースにどのように対処するかが問題だ」と語った。

 少しでも早く手を打つことが、悲劇をなくしていくことにつながる。関係者は子どもの心の痛みに、もっと敏感であってほしい。14歳の輝く未来を、命を守れる社会に変えていくために。

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