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金曜時評

問われる真の評価 - 編集委員 松井 重宏

 奈良市の仲川元庸市長が当選から3年を迎えた。選挙の投開票が行われた平成21年7月12日の深夜、三条通り商店街に構えた事務所で、初当選の報にわく支持者を前によろこびを語った仲川氏。翌13日には当選証書を受け取り「選挙で掲げた政策を4年間で実現していく」と決意を語ったが、任期の4分の3を終え、来年に改選を控えた今、その市政運営の成果が問われている。

 初登庁したのは同月31日。このとき仲川市長は「市民がまちの主役となる本来の住民自治の形を4年で実現していく」と話し、就任あいさつで本社を訪れた際も「期待を裏切らないよう、4年後に奈良市が良くなったと感じてもらえるよう市政を変えていきたい」と意気込んだ。

 再三、4年という数字を挙げ、早期の政策実現を目指す発言を繰り返したのは、施策達成の目標年次を示し、スピード感のある政治を求める世論に応えようとした結果。また当時、全国の市長で2番目という若さと、しがらみのない立場が、逆に市民の目に「頼りない」「素人」と映らないよう、即戦力を強調したかったからだろう。

 そんな気鋭の新人に期待が集まる中、最初に仲川市長の名を世間に知らしめたのが「ガム事件」だったのは残念。その後も市議会や職員と歯車がかみ合わず、思いだけが空回りする場面も目立ったが、平成22、23年度そして24年度と3回の予算編成を経験して同市長はどう成長し、実績を挙げてきたのか。

 選挙で掲げた「奈良マニフェスト」の進み具合は市のホームページに掲載、事業ごとに外部有識者の点検を受けているが、目玉の一つ「不要な事業を廃止、縮小して37億円の政策予算を捻出する」とした公約では、金額の達成や事業仕分けに懐疑的な意見も付されるなど、評価は一様ではない。

 むしろ注目したいのは難産の末、昨年7月に可決された第4次総合計画。平成23年度から10年間を見通した市政運営の基礎となる計画で、選挙用のマニフェストとは違い、地に足の着いた、市民生活に直結する内容だけに、これをどう進めるかが「市長の手腕」。

 にもかかわらず、仲川市長はマニフェスト優先に固執しているように見える。例えば県が打ち出したJR関西線の新駅誘致構想に対し、箱モノ行政に否定的な仲川市長は消極姿勢を示し、リニア新幹線の中間駅誘致でも大和郡山市や生駒市の後塵を拝している。これで総合計画に掲げた市の活性化が果たせるのだろうか。大きな不安材料だ。

 この間、平成21年4月に36万8592人だった奈良市の人口は今年4月現在で36万6429人と約2000人減少。全国的な傾向の中で縮小均衡だけでは浮揚は図れない。

 任期満了まで残り1年。市の将来像を見据えた上で、何を行政に求めてくのか。今もなお試行錯誤が続く「仲川市政」の評価が定まりつつある。

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