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金曜時評

勉強だけで済むか - 編集委員 北岡 和之

 今月5日深夜、国内の商業用原子力発電所で唯一稼働していた北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が停止。これで42年ぶりに全原発が停止した。「原発ゼロ」の日々が静かに続く。今も予断を許さない状況下にある東京電力福島第1原発事故から1年以上が経過し、焦点は停止した原発の「再稼働」だ。

 これからのエネルギー政策の方向を示し、原発を推進するか、やめるかを決断するのが政策担当者(政府)の仕事。だが政府の対応は遅く、「決められない」民主党政権の体質をまたも露呈した格好だ。

 例えば、つい最近の事で言えば、国の原子力委員会・小委員会が16日、原発の使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」について、使用済み核燃料の処理に関して再処理、地中廃棄、両者並存の三つの方法を比較して、原発依存度が不透明な場合は、並存が最も優れているという総合評価を下した。

 この玉虫色の総合評価なるものを、どう理解すればいいのか。「原発依存度は低下してゆくだろうが、原発ゼロになることはありません」と言っているのだろうか。原発依存度が不透明の場合、という言い方は、何も判断していないのと同じではないのか。

 原子力委員会は、国の原子力開発の方向を決める計画「原子力政策大綱」を定める中核の機関。その小委員会が今ごろこんなことを言うのでは頼りなくて仕方がない。

 では、県関係の国会議員は原発についてどう発言してきたか。自民党の高市早苗衆院議員などが自らのホームページで発言したりしているが、まとまったものとしては民主党の馬淵澄夫衆院議員の言及に注目せざるを得ない。馬淵氏を会長とする同党有志の「原子力バックエンド問題勉強会」はこの2月、第1次提言をまとめ、公表した。昨年3月26日から94日間にわたって、首相補佐官として福島第1原発事故の対応に当たってきたと自負する馬淵氏の取り組みの成果が問われる。

 馬淵氏率いる勉強会の取り組みはまさに、先に挙げた原子力委員会・小委員会が評価を下した使用済み核燃料の処理に関わる問題を含む。原子力の「バックエンド」とは「原子炉の廃炉や放射性廃棄物の処理、核燃料サイクルにかかわる事業の総体」を指し、馬淵氏らの“政策提言”が加わることで、事態をさらに混乱させないかと懸念する。

 勉強会の第1次提言からは「ゼロからの見直し」「複線的・複眼的視点に立った現実的な政策判断」という抽象的な言葉ぐらいしか印象に残らない。他は「勉強してきました」というだけのことではないか。現状では、見直されるという原子力政策大綱やエネルギー基本計画、革新的エネルギー・環境戦略などの整合性さえはっきりしないのだ。

 国内総発電量に占める原発依存度は平成22年度で約26%。これを上げるのか、下げるのか、ゼロにするのか。それを言わなければ馬淵氏の政治判断にはならない。

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