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金曜時評

政争の具にするな - 主筆 甘利 治夫

 前田武志国土交通相と田中直紀防衛相に対する問責決議案が、自民党など野党3党が共同して参院に提出された。きょう20日午前の参院本会議で採決し、野党各党の賛成で可決される見通しだ。

 田中防衛相は就任直後から、防衛・安全保障に対する基本的な知識の欠如が指摘され続け、国会答弁での言い間違えや事実誤認で迷走を繰り返した。また北朝鮮のミサイル発射をめぐる対応の混乱などで、閣僚としての資質が厳しく問われてきた。

 前田氏の場合は、岐阜県下呂市長選に出馬した元衆院議員への支援を依頼する文書を民主党の同僚議員から頼まれて、直筆で署名。これが告示前に地元の建設業協会幹部などに郵送されたため、公職選挙法の事前運動や公務員の地位を利用した選挙運動に抵触する疑いがあるとして、一斉に批判された。

 これについて、前田氏は会見で「一般的な激励文書との認識で、意図的なものでなかった」と説明。そして「軽率だった」ことを認めた上で、職務を遂行すると続投の意思を表明した。秘書官らの対応が問題だったが、公選法に抵触する疑いがあるだけに、ことは「軽率」で済まされる問題ではない。

 問責決議案は、可決しても法的拘束力はないが、過去の事例で、いずれも短時日の間に辞任せざるをえなくなり、交代に追い込まれてきた。

 戦後の現行憲法下で7例あり、自民党政権時代は額賀福志郎防衛庁長官、福田康夫首相、麻生太郎首相の3人が問責決議された。民主党政権になってから、仙石由人官房長官、馬淵澄夫国交相、そして一川保夫防衛相、山岡賢次消費者行政担当相の4人が決議され、また2人が問責される。

 野田内閣になってから、昨年12月に一川防衛相と山岡消費者相の問責決議が可決したが、辞任せずに、年明けの内閣改造で更迭した。今度も野田首相は、交代させない方針だ。しかし、自民党時代でも3人なのに政権交代から6人目というのは、民主党そのものが問われているに等しい。

 前田、田中の両氏は、ともに参院議員だ。その参議院における身内の決議の重さを知らねばなるまい。県出身の前田氏のこれまでの政治行動をみれば、政治家としての自らの処し方は一番よく知っていることと思う。

 これまでは会期末などに提出された問責決議だが、野田首相が政治生命を懸けるとした消費税増税法案の審議の影響が気になる。

 衆院解散をにらんだ駆け引きの側面があり、自民党は問責決議された閣僚が辞任しないなら、国会審議に応じないとしているが、早くも19日の委員会審議を拒否した。消費増税法案をはじめとした重要法案が控えているだけに、野田首相が訴える増税を含む一体改革の論議が、どこまで進められるのか。

 駆け引きであるにせよ、問責されるのは、民主党自身に問題があるのではないか。

 政権交代後の鳩山由紀夫、菅直人両首相とも、言葉の軽さが指摘され、1年前後で退陣に追い込まれた。同時に閣僚級の資質も問われ続けた。交代当初の清新さは消えた。総選挙で「まかせてほしい」と訴えた民主党だったが、未熟さばかりが目につく。鳩山、菅の両首相もそうだったが、田中防衛相の答弁に象徴されるように、言葉の軽さが際立ち、この国を本当にまかせていいのかと、国民の不安を増大させている。

 野田首相は、きょうの問責決議の採決を真摯(しんし)に受け止め、正常な審議の場をつくってほしい。野党も問責決議を政争の具にしてはなるまい。

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