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金曜時評

地域の自主防災を - 編集委員 水村 勤

 東日本大震災から1年、昨年9月の台風12号豪雨禍から半年がたった。改めて地域の中での自主防災の大切さを痛感している。

 特に台風12号は、五條市や十津川村など県南部で多数の人命を奪う大きな被害をもたらしたのであるが、一方で集落内でまとまり自主避難を行い住民の命を守った実績は記憶に新しい。

また、造林したスギ、ヒノキの森の樹林ごと根こそぎ押し流した深層崩壊の問題の研究や、災害に強い集落づくり、暮らしと産業の復興など問いかけられている課題も多い。

先日、御所市の東川裕市長は「地方自治体として災害への対応が非常に重要だ。『防災』を柱にコミュニティーづくりを市民とともに考えていきたい」と筆者に語ってくれた。東川市長のイメージは、小学校区をいくつかに分けた小集落の住民が一つにまとまり、災害時に協力して自主防災を行うというもの。いざという時に、隣近所の助け合いを日頃から準備しておこうというのだ。

 本県地域がかかわる東南海地震は、最大震度7が想定されているが、今回の東日本大震災なみの巨大地震が紀伊半島を直撃すれば、想定を超えた未曽有の被害が県内にも広がるのは間違いないことだろう。地域の防災組織がどこまで機能するのか不安がある。

 御所市の場合も、遠隔地の自治体と災害時の相互援助協定を結ぶパートナーを決めていない。県も新年度、県内版の「カウンターパート」を研究するが、同市に限らず、この方面の課題は日本国中、まだまだ進んでいないのが実情と思う。

 ところで、県内唯一の中核都市・奈良市の現状はどうなのか。市議会は昨年6月の議長選工作で贈賄申し込みの不祥事解明に、後ろ向きに終始しているままであり、市政刷新の気概を失ったと言わざるを得ない。

 一方の市当局もどうなのか。まず、昨年8月、市民から滞納した税を督促し徴収しては“つまみ食い”が長期にわたって横行していることが明るみとなった。このほかにも、滞納処理を適切に行わず不納欠損していた不適切な対応や、環境部職員の長期病休問題も尾を引く。市営住宅の家賃を滞納し、自ら徴税にあたる職員の存在も一昨日、分かった。

 職員の不祥事が相次ぐ。公務員としてのモラル低下、士気低下を断じざるを得ない。仲川元庸市長自身の指導力が問われている。信頼感や指導力に疑問符の付く人々が市民に「自主防災」を呼び掛けても、どんな協力が得られるのか、お寒い限りだ。

 最近の御所市は、厳しい市財政の再建計画を軌道に乗せ、さらには従来にない総合計画を策定するなどめざましい。タウンミーティングなどを通じ、市民を巻き込む東川市長の指導力に負うところが大きいようだ。

 自主防災を進めるために、行政と市民のパートナーシップをどう築けばいいのか。大震災と台風12号災害は、首長の指導力や地域防災はこれでいいのかと、問いかけている。

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