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金曜時評

がむしゃらに挑戦 - 編集委員 松井 重宏

 県の平成24年度予算案が発表された。一般会計は4706億8100万円で、前年度比は、知事選後の肉付け予算(6月補正後の予算)に比べて2・2%の減。指針となる地方財政計画のマイナス0・8%より落ち幅が広がった。ただ同補正は基金の移し替えで金額が膨らんだ面があり、荒井正吾知事は、実質1・3%の増になると説明。さらに額の増減より施策のチャレンジ性を重視して編成に当たったと話し、消極的な緊縮型ではなく、むしろ積極的な予算だとアピールした。

 具体的には、360項目におよぶ新規事業がある。各施策は、継続事業も含め「県行財政運営プラン2012」に基づき着実な進展が図られているが、同時に荒井知事は「ありきたりのことをせず、多少の失敗を恐れずに目新しいことにチャレンジする」のも必要と指摘、予算案に反映させたという。

 例えば、新産業創出につなげるリビングサイエンス事業。少子高齢社会に対応、科学技術を活用した課題解決型の産業振興を図る試みで、県が音頭を取って、研究者や企業による研究、製品化を促す。言うほどに簡単ではないだろうが、将来性のある意欲的な事業に違いない。

 また、このリビングサイエンス事業が提案する「課題解決型の産業」は、地域にとって負の環境を逆手に取り、経済振興に結びつける発想と言え、マイナスをプラスに転じる取り組みは「ピンチをチャンスに変える」施策にも通じる。豪雨災害に見舞われた県南部の復旧、復興でも欠かせない視点だ。

 荒井知事は来年度予算案の編成で「経済活性化」「くらしの向上」とともに豪雨被害からの「復旧・復興」を施策の柱に据えた。特に災害対策は早期に対応するため、関連事業に総額253億7100万円を計上。もし、これがすべて被害からの復旧だけに費やされたら予算案の魅力は大きく減じる。いかにマイナスをプラスに、復旧を復興につなげられるかが問われている。

 注目したいのは土木部に新設する「深層崩壊対策室」と過疎対策も見据えた「ふるさと復興協力隊」の派遣。今後、国内で増加が懸念される深層崩壊の研究を県が主導、さらに大学や研究機関から恒久的な施設も現地に呼び込み、地域振興や安全対策の促進につなげるような発展は望めないか。また被災者の生活支援、産業復興に当たる人材を県が市町村に配置する協力隊も、将来的な定住化が期待されており、災害対策の先進地を形成することで「新しい山村のあり方」を示せるかもしれない。

 税収の低迷が続く中で、各自治体は「無い袖を振る」ような苦心の予算編成を強いられいる。だからこそ知恵と工夫に加え、思い切った行動力がものをいう。また行政には「チャレンジ精神」とともに、民間活力を掘り起こし、予算の実効を挙げるため「がむしゃら」な姿勢を持つことも求めていきたい。

 

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