注目記事山下県政 世論調査の全結果掲載

金曜時評

議会の浄化を急げ - 論説委員 小久保 忠弘

 奈良市の仲川元庸市長は3日、政治倫理条例検討委員会の席上、市役所は「不祥事のデパート」と発言した。幹部職員による市民税着服事件や現場職員の“病休”問題など、就任して以来、相次いで発覚した不祥事を自嘲気味に語ったのだろう。だから倫理条例をつくって綱紀粛正を図ろうというのが狙いらしい。「最も厳しい条例を作り、信頼回復に努めたい」と自身のマニフェストにもある条例実現に意欲的だ。任期を迎える来年の選挙をにらみ、実績づくりに励むようだ。

リーダーみずから「不祥事のデパート」などと人ごとのように言える度胸も大したものだが、デパートの社長はご自身だということを忘れないでもらいたい。倫理条例の狙いはマニフェストにもあるように「市長や市議、その三親等以内の親族が経営する企業への公共工事等の発注を禁止する」ことのようだ。政治家つまり議員対策である。公共工事に巣食う悪徳議員を追放する市長の勇ましい姿勢には多くの市民が拍手するだろう。

 その“悪徳議員”の話題で紙上をにぎわわせてきた奈良市議会だが、昨年の議長選をめぐり、贈賄(申し込み)容疑で逮捕された山本清前議長は9日、大阪地検特捜部により起訴された。事件は法廷の場に持ち込まれる。

 市役所が市長の言う「不祥事のデパート」なら、市議会は「不祥事のスーパー」だろう。8日付の本紙投稿欄にも、五條市の北沢孤山さんが奈良市と下市町の二つの汚職事件を取り上げ「大概の県民には他の市町村にもあり得ることだと見る人も多かろう。我田引水のために選挙民をなめたような汚職議員は即時引退してもらい、善良な人物を選ぶのがよい。公僕の本懐を心得た人物を選ばないとその地域の大損失になる」と寄せている。なんでこんな人たちを選んだのかと、あきれている場合ではない。根が深ければ深いほど、その先まで掘り下げ禍根を断たねばならない。

 この事件は、誰もが思うように、山本清前議員が一人で立案し、企画し買収工作を開始したとは考えられない。水面下の多数派工作を、グループとして各自分担して動いたと考えるのが自然で、そこには指揮する者がいて督励した者がいるはずだ。

 刑法には「人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する」(61条1項)という条項がある。刑法は、直接犯罪行為をしていなくとも、他人に対して犯罪行為をするようそそのかした者にも、犯罪が成立するとしているのだ。実行した者はもちろんだが、そそのかして利益を得ようとした者こそ罰せられなければならない。

 そういう意味で、事件の全容解明と、並行して行われる今後の捜査に期待したい。さらに、これまで地検捜査を口実に、議会としてみずから襟を正す努力をしてこなかった議長、副議長ほか消極的だった議員の姿勢に猛省を促さねばならない。調査委員会設置も含め、早急に形にすることが求められよう。

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