特集奈良の鹿ニュース

金曜時評

発展へ前進の年に - 編集委員 松井 重宏

 平成24年は、県にとってどんな年になるのだろう。民間のシンクタンクが県内企業の経営者を対象に、今年の業況見通しを聞いた調査では、悪化すると答えた割合が前年より9.1ポイント減少、景気回復のきざしが見える結果となった。ただ引き続き、悪化予想が改善予想を33.9ポイントも上回っており、厳しい状況からは抜け出せていない。

 背景には東日本大震災やユーロ圏の債務危機など国内外の経済要因があり、円高による影響も、昨年9月の調査で33.4%の県内企業が「収益が悪化する」と回答。対応として海外進出を検討しているのは6.3%にとどまったが、別の調査では産業空洞化について75・4%の企業が「懸念がある」と答えており、大企業が生産拠点を海外に移す動きを加速しているのに伴って、県内の産業空洞化も深刻化する可能性が高まっている。

 そうした中で県は昨年11月、県内に企業誘致を図るため、東京都内で初めて「県企業立地セミナー」を開催、荒井正吾知事が陣頭指揮に立った。また同月には生駒市の学研都市高山第1工区にパッケージ製造会社の新社屋が完成し、15年ぶりに同地区で新規の企業立地が実現。県が、研究所しか認めていなかった立地条件を見直し、研究開発型産業施設等の設置を可能としたことが奏功したとみられ、規制緩和の好例となった。

 生駒市では、これを機に、あらためて産業振興の機運が高まっていると言い、生駒商工会議所の久保昌城会頭は新年あいさつで「学研地域、生駒市域にリニア中央新幹線の新駅をぜひとも誘致したい」と提案。同新駅をめぐっては大和郡山市議会も昨年12月、地元に建設を求める決議を行っており、県内各地で議論が活発化している。

 リニア中央新幹線は、東京と大阪を結ぶ国土の新たな大動脈。整備計画に主な経過地として「奈良市付近」が明記されている県にとっても中長期展望で、最重要課題に位置付けられる事業だ。

 JR東海が昨年11月、中間駅の費用について地元負担を自社負担に方針転換。これまで長く“夢”の超特急だった事業が“現実”に向け大きく動き始めた。また整備は東京―名古屋間を先行させる二段階方式が示されているが、大阪府の松井一郎知事が「東京と大阪両側からの着工を目指してもらう」と述べるなど、今後、全線開通が早まる可能性も出てきている。

 同中間駅については県や奈良市の積極的な発言にも期待。周辺整備や経済効果を挙げる受けざらづくりを含めた、具体的なプランを策定した上で、誘致合戦を有意義な形で進めてほしい。

 今年は川上村の大滝ダム事業が総仕上げを迎え、大和郡山市では県内初のスマートインターチェンジも一部完成、稼働を始める。県南部の災害復興も併せ、平成24年は県にとって大きな目標へ一歩を踏み出す年になる。

 

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