注目記事2024年春 奈良県職員人事異動 発表!

金曜時評

役所や議員に問う - 論説委員 小久保 忠弘

 今年を象徴する漢字を1字で書けと言われて、どんな字が思い浮かぶだろう。とても1文字では書き切れないほど多事多難であったと多くの人が言うに違いない。ひどい年だったと誰もが振り返るはずだ。

大地震、大津波、原発事故、台風水害…。天災とも人災とも言える数々の災難に、人間は立ち尽くすほかなかった。「想定外などと言うなかれ。もともと自然とはそのように過酷なもので、人間の都合など考えはしない。想定できると考えることこそ人間の驕(おご)りだ」。言われてみるとその通りだが、大方は日頃からそんな覚悟など持ち合わせてはいない。備えなき身は右往左往するほかなかった。

 漢字ではないが、コンプライアンスという言葉も紙面をにぎわわせた。企業などが守るべき規範がおろそかにされたとして、ことさら強調された年だった。

 コンプライアンスとは、法を守ることは当然のこととして、利潤を追求する企業活動にも一定の規律を求めるものだ。法令順守にとどまらず、社内規定、マニュアル、倫理、社会貢献の度合い、さらに企業リスクを回避するためにどういうルールを設置していくか、どのように運用していくかを考えるべきというもの。

 巨額の損失隠しを続けたオリンパスの不正経理は、追放された外国人社長の告発によって明らかになった。結局、現社長以下は総退陣するというが、同社の損害は計り知れない。創業家の御曹司が賭博などで使った乱費を黙認し続けた大王製紙のような会社もあった。

 それでも企業の悪事は、露見した時点で世間の指弾を受け、ついには消費者や取引先から見放される。早晩、企業活動が困難になり淘汰(とうた)される運命にある。

 それに比べて役所や政治家のコンプライアンスはどうなっているのか疑問が多い。

 県内10大ニュースの一つに入るであろう奈良市会の議長選をめぐる不祥事は、県都の議会にあるまじきお粗末な事件であった。検察の捜査が続いているが、「ごたごた」では済まされない。名前の挙がった議員以外に買収工作を企画立案し、指揮し、実行させようとした人物がいたのは確かだろう。同僚議員の暴露で明るみに出たが、このようなことは常態化していたのではないかと疑いたくなる。これにならうかのように先日、下市町の議長が贈賄(申し込み)容疑で逮捕された。

 さらに同市では、幹部職員が永年にわたり市民税を着服していたことが発覚した。手口も巧妙で収税の責任者による犯罪とあっては市民の信頼を損ねること甚だしかった。いまだに全容が解明されず、さっさと警察に突き出せばいいものを、内部で調査を進めているという。不況の年の瀬に、金策に走り回る庶民からはかけ離れた世界だと言うほかない。

 悲しいかな役人や政治家の不正、不祥事は後を絶たず、いつでも想定できる範囲だ。あらかじめ網を張って張りすぎることはない。

 

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