注目記事奈良県内の自治体異動名簿掲載

金曜時評

地域から第一歩を - 編集委員 水村勤

 大阪ダブル選挙から5日がたった。現職を前府知事の橋下徹氏が破り当選した大阪市長選挙と、同氏の後継候補で大阪維新の会幹事長の松井一郎氏が他候補に大差で当選を果たした大阪府知事選の得票結果は、全国に大きな波紋を与えている。

さまざまな評価があろう。選挙民にとっては政治も経済もジリ貧状態に感じる中で、現状を変える期待が橋下氏らに集まったのではないか。

口では「府市協調」と言っていた時代もあったが、大阪市内の開発は政令指定都市の市の専管事項で、地下鉄の路線問題をはじめ、府内の開発の問題でも何かとごたつきがあった。市民の立場から見れば「二重行政」の無駄、効率の悪さは広がっていたようだ。

 それよりも何よりも、人口減、高齢化が進行する中で、経済のデフレ状態が続き、所得の減少、年金給付水準の年々の悪化が顕在化するなど、社会の行き詰まりが日々の暮らしの中で見えるようになったことが大きい。これは奈良、大阪に限らず日本社会全体の閉塞(へいそく)感となっている。

 県内の商工会や商店街などの活性化に向けて調査や助言に取り組む中小企業診断士の梅屋則夫さんは最近、閉塞感を訴える経営者の声を多く耳にしている。「マーケットが縮小していることに気付きながら、従来の事業を打ち捨てることができず、悶々(もんもん)としている。強いリーダーの出番に賭けてみたい」。こんな思いが強いという。

 先日、県内への企業立地を呼び掛けるセミナーが都内のホテルで開かれ、荒井正吾知事自らプレゼンテーションを行った。関心を寄せた企業のフォローをどこまでできるだろう。円高時代に国内での設備投資はきつい。やはり近府県で設備の再配置を計画している中小企業をピンポイントで誘致することだ。

 一方、工場などの誘致よりは地域の中で小規模のビジネス開発こそ、これからの奈良の可能性を広げると梅屋さんは力説する。一つ一つは小さいけれど、地域の小規模ビジネスを開発した人々の「連関」で地域の良さを創出していく考え方だ。

 素地はある。高取町内で始まっている「まちおこし」の活動だ。毎年秋には「たかとり城まつり」も開かれ、3年前からは「町家のかかし巡り」も始まった。また、町内の観光拠点を案内する観光ボランティアも活躍。地元ならではの丁寧な紹介が喜ばれている。

 こうしたまちおこしは、地域の多くの人々とパイプを持ち、人々を巻き込む良きリーダーの存在が大きい。ネットワークの中でわずかなお金でも流通することで小さなビジネスが育てば、地域の中にある人材を含めた潜在的な力を引き出す風土ができてくる。若い人の雇用にまで発展できるかは未知数だが、奈良の歴史文化というロケーションに、まちおこしと経済を結び付けた方法論は魅力的だ。

 ジリ貧からの脱出へ、自らできる小さな第一歩を踏み出そう。

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