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金曜時評

松井新市長に望む - 主筆 甘利 治夫

 桜井市民は谷奥市政にノーを突き付けた。

 4年前に無投票当選を果たした谷奥昭弘市長だったが、この4年間の市政運営に対する市民の審判が下された。元県会議長で新人の松井正剛氏に大差で敗れた。その意味するところは大きい。

 谷奥氏は平成11年の選挙に初出馬して約1万1400票を獲得、約6000票差で現職の長谷川明氏に敗れた。続く同15年の選挙では得票を増やし、約1万4300票を獲得したものの、やはり長谷川氏に3400票差で敗れている。

 そして同19年の前回選挙では、対抗馬がなかったため、谷奥氏の無投票当選となった。3度目の正直で市長に就任したことになるが、その市長としての谷奥氏の4年間に対する評価が、今度の選挙だった。

 8年前の得票より実に6000票も減らし、松井氏に約1万票という大差で敗れた。投票率は前々回(66・65%)よりも大きく下回って54・62%。選挙前の予想では、投票率が低ければ谷奥氏有利といわれていたのに、まったく逆の結果となり、投票総数の31%の得票という惨敗だった。

 無投票で市長に就任した谷奥氏におごりはなかったか。その政治手法に、各方面から厳しい声が上がっていた。谷奥氏は赤字だった市の財政を、行財政改革で黒字に転換したと胸を張った。しかし、どこの自治体も懸命な取り組みをしてきたし、不景気への経済対策で地方交付税が増額されたことが、大きな要因でもあった。

 選挙戦における支持の構図にみられるように、各種団体や庁内からも谷奥氏の行政運営に対する疑問の声が上がっていた。職員組合が松井氏支持に回ったのもそうだ。とくに市内の業界の多くから支持を失っていた。剛腕ぶりが「聞く耳をもたない」との見方となっていった。

 市民から大きな期待が寄せられた松井氏は、当選の喜びにひたっているヒマはない。谷奥市政の何が問題だったのか、そこをしっかり押さえてほしい。

 選挙中に約束したことを、どう具体化するか。いつまでに、どのようにして、財源はどうするか、見える形で進めねばなるまい。そして、多くの人の声に耳を傾けることだ。だからといって優柔不断であることは許されない。すぐに取り組む姿勢と、何事も責任回避しない姿勢が求められる。

 経済危機は国の内外に及び、抜本的な対応が急務となっている。国や県まかせではなく、桜井市独自にできることがある。緊縮ばかりで閉塞(へいそく)感が漂っている。これを打破するには、経済活動を活発化させるしかない。

 JRと近鉄が交差する桜井駅の駅前はいかにもさみしい。纒向遺跡が卑弥呼の里と比定されるなかで、観光産業には大いに力を入れてほしいし、全国から訪れる考古学ファンのためにも、玄関口となる駅前の新しい形が求められよう。観光産業とともに、地場産業の育成、市内の業者に対する手立てが必要だ。

 いずれにしても市民の大きな期待のなかで、新しいかじ取り役に就任する松井氏は、市民を裏切ってはならない。

 

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