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金曜時評

議会の存在を問う - 編集委員 水村 勤

 奈良市議会の6月定例議会で行われた、利益供与による議長選挙工作が明るみになって50日ほどがたった。天野秀治議員がスマートフォンの録音という動かぬ証拠を公表し、「米5年分」を持ちかけた前議長の山本清議員が辞職した。しかし、酒井孝江議員が詳細なメモを示し、肉料理の接待でポストの斡旋を条件に工作を図った疑いが濃い中西吉日出前副議長は、口を閉ざしたまま現在に至っている。

市議会各会派の動きも鈍い。議長選工作の疑惑解明の必要性を認める声もあるが、組織だった動きは見せていない。しばらく選挙もないからと、民話の「三年寝太郎」ではないが、まさかこのまま「寝て暮らす」つもりではないのだろう。

 もっとも、寝太郎はある日突然起きて、山に登って岩を転がし川をせき止め、田畑に水を潤し、干ばつに苦しむ農民を助ける英雄になる。寝太郎はただ寝て暮らしていたわけでなく、考えていたのだという。市議会の議員諸氏も寝太郎のように、ぼちぼち君子豹変(ひょうへん)すべきなのではないのか。

 そこで提案である。地方自治法第100条に基づく百条委員会の設置をこの機会に行い、関係議員の出頭やメモなど記録類の提出を求め、議会自身の自助努力で議長選工作の実態に迫り、黒白をはっきりすべきだと思う。

 かつて市議会は、元奈良市長の鍵田忠兵衛氏(現県議)の税金未納問題と市の欠損処理問題を調査するため百条委員会を設置し、同氏の政治モラルを問うた実績がある。今回の疑惑の舞台は市当局ではなく、市議会自身である。今こそ汚名挽回をしなければ、どうして古都奈良の市議会として名誉を保てるのだろうか。

 今年は3月の東日本大震災で約2万人の死者・行方不明者を出し、9月の台風12号でも奈良、和歌山、三重などで多くの人命が失われている。国民の政治をみる目はかつてなく厳しいものとなっている。財務相から首相となった野田佳彦氏に対しても、人々のまなざしは甘くない。財務相の時に了承していた埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎の建設を凍結せざるを得なくなった。当然のこと。計画を白紙にして、国家公務員の宿舎制度自体を見直すべきだろう。

 地方も中央と同様だ。地方議員も特別職公務員なのである。住民に対して奉仕者としてのモラルが求められる。家を失い家族を失った、あの被災地の首長や議員たちが、被災者の生活再建を優先し黙々と公務を果す厳しい姿をみれば、いまの市議会の姿勢は奈良市民に対してとても許されるものではあるまい。

 さて、「米」や「肉」で釣るような多数派工作に反発する議員の結束で就任した上原雋議長と、松村和夫副議長である。出番の時がやってきた。不祥事と決別するためにも、この問題の放置は許されない。市行政をチェックする本来の機能を果たすためにも。

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