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金曜時評

自立と連携に期待 - 編集委員 松井 重宏

 全国11県の知事で構成する「自立と分散で日本を変えるふるさと知事ネットワーク」の第4回会合が一昨日、奈良市で開かれ、東日本大震災の発生を踏まえた新しい国づくりに向けた提言をまとめた。

 当日は奈良を含む6県の知事、2県の副知事らが出席。4回目の会合で初めて東京以外での開催となり、座長を務めた荒井正吾知事が存在感を示した。

 同ネットワークは随分と長い名称で、あまり聞き慣れない印象だが、設立されたのは昨年1月。全国47都道府県のうち4分の1近い11県の知事が参加しており、決議には相当の重みがある。こうした場で県が積極的に役割を担い、自らの姿勢を内外に示していくのは意義がある。

 荒井知事は先月12、13日に秋田県で開かれた全国知事会議に出席。27日には和歌山県高野町で三重、和歌山両県知事との「紀伊半島知事会議」に臨み、翌日の28日は大阪市内で開かれた関西広域連合の会合にオブザーバーとして初めて参加。地方分権や広域連携について発言を続けてきた。

 そうした一連の動きの仕上げというわけでもないだろうが、今月3日に知事ネットワークが採択した「新しい国づくりに関する共同宣言(奈良宣言)」には、県の主張がよく反映されているように見える。

 ネットワークの構成メンバーは奈良をはじめ青森、山形、福井、石川、山梨、長野、鳥取、島根、高知、熊本の各県知事で、大都市を含まない「ふるさと知事」ばかりなのが特徴。それだけに目指すのは従来の広域連携の枠組みを超えた相互ネットワークだ。

 奈良宣言は、日本海側と太平洋側、また東日本と西日本が相互に支え合う複軸型の国土構造に転換することで災害に強い国土の構築を図るとし、地域の個性や強みを生かした産業の振興と地域、業種間の新たな連携、交流を進めるべきと訴えている。

 キーワードは、その長い名称に盛り込まれた通り「自立」と「分散」だ。荒井知事がまとめた「奈良の未来を創る五つの構想案」のポイントも、大都市依存のベッドタウンからの自立にある点と合致する。

 地方分権をめぐる県の対応では、関西広域連合への参加、不参加問題があるが、知事ネットワークは設立趣意書の中で、大都市に人口や産業を集中させて効率化を進める従来の手法が地方を疲弊させたと批判。中心をつくらず、地方と地方を直結させることで新しい地方自治のモデルを創出するとしており、東京一極集中に対抗し得る、新たな核づくりも視野に入れる関西広域連合とは性格、立場が明確に違うのが分かる。

 挑発的とも受け取れる橋下徹大阪府知事の発言もあって、関西広域連合ばかりが関心を集める中、自立という地域振興の視点から起こした地方分権議論にも、県民は、もっと注目する必要がありそうだ。

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