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金曜時評

県の議員も発言を - 編集委員 水村 勤

 一昨日、菅直人首相は何を思ったか、「原発のない社会を実現する」と“脱原発社会”を高らかに語った。もちろん、自分がなすべき作業と後任に託す課題を明らかにしたわけではない。得意の思い付きと批判されても仕方がない。

先日は、九州の玄海原発の運転再開を地元に要請していた海江田万里経産相を頭越しに、菅首相は新たな再開の安全基準「ストレステスト」を持ち出し混乱させた。原発再開の基準を国民に提示し、基準に基づいてその是非を判断することはもっともと思われるが、政策決定にまつわる“ドタバタ”はうんざりする。

 民主党の代表選挙規則には、「常任幹事会は、政局等に係わりとくに必要があると判断する場合、両院議員総会の承認の下に、代表選挙の期日について、第1項、第2項と異なる決定をすることができる」とある。前例にとらわれずに選挙日程が決められるのだ。

 退陣を口にしながら、実行しない菅首相を執行部が許している理由が分からない。代表選に向けてぐずぐずしている執行部を支配する行動原理は何なのか。果報は寝て待て、とでも思っているのか。

 秋田市で開かれた全国知事会議では、各知事の間からは震災や原発事故に対する施策へのいらだちや批判が相次いだ。特に玄海原発の地元の古川康佐賀県知事は「政府の誰の言葉を信じていいか分からない」と不信感をあらわにした。わが荒井正吾知事も「首相と大臣が言うことが違い、国家がぶれていては任せられない」と珍しく政権批判。「国の判断に信頼感がない現状で、地方の権限・権能を確保する観点とともに、地方の判断能力を向上させるという検討課題がある」と問題提起した。

 知事らの指摘を待つまでもなく、菅政権の国家統治能力は疑わざる得ない事態にある。政権内で国交相や首相補佐官を務めてきた馬淵澄夫衆院議員には、政権の抱える問題の実情をつまびらかにしてもらいたい。党県連代表の滝実衆院議員は、旧自治省で消防庁長官まで務めた元キャリア。政治主導がなぜうまくいかないのか、県民に語ってほしいものだ。

 その上で、拙速を戒めつつスピーディーな政策決定、官僚との信頼を回復するために政治主導の欠点の修正、野党との関係修復など、政権運営を改善するために、早急な党代表選挙を行うために、同党の県関係国会議員も自身の見解を明らかにし、堂々と政局への行動を取ってほしい。

 今、菅氏の退陣に道筋をつけることは難しい。菅氏は思い付いた事は口にしても、それを収斂(しゅうれん)する能力も忍耐力もないし、無礼な所業を重ねても、心から反省することもなく、これからも平気で生きてゆきそうだ。彼が美辞麗句を並べ立ててても、状況は何も良くならない。だからこそ、今の政治家にもっとも欠けている愚直さを、言葉と態度で示す時ではないのかと思う。

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